(かわいいアノコ続き)



小春はかっこええ
普段はオカマキャラ演じとるけどほんまは頭もええしサバサバした男前
一方うちはモノマネだけが得意で頭もようないしテニスだってレギュラーではあるけれどレギュラーでは下の方
美人でもナイスバディでもないし目つきも生まれつきの釣り目のせいで良いとは言いがたい
おまけに口調は男勝りときたものだ
なのに何故、小春はうちを選んでくれたんだろう
別にそう思ったのは急にとかじゃなくてずっとずっと、思ってた




「なんで金色くん、一氏さんなんかとおるんやろ」

けど、他人から言われるとダメージは普段の数十…数百倍やった
言っとったのは隣のクラスの可愛い系の女の子
うちとは違う、くるくると内巻きされた髪の毛とたれ気味の瞳に甘ったるい声はいかにも女の子ってかんじ
彼女が小春の事を気に入っているのは知っていた
彼女だけじゃない、小春は本当に優しくて、誠実な人やから隠れファンが多いってことも知っている
そして彼女達はうちなんか歯にもかけてない
彼女達にとってうちは小春の側におるだけの空気みたいな存在ではなから敵ですらない
その価値すらないんや
そんなんやって知ってた
知ってて、知らんふりして、小春につきまとってた

「金色くんも迷惑しとるやろし、ほんま鬱陶しいわぁ」

うちはクラスへ戻るのも忘れて思わずその場から逃げ出した
あの子がいる廊下を通らなければ教室へは戻れない
けれどあの場へ躍り出る勇気なんてうちにはなかった
あの子の言ってる事はうちが目を反らしていた事実やから
たまたま、小春がうちを拾ってくれて、コンビを組んでくれて、構ってくれている
ただ、それやけなのに
うちは小春の特別やと、小春もうちが好きだと、勝手にあらぬ勘違いをしとった
ただそれは、そうならいいなっていう妄想と願望でしかあらへんのに



うちは上履きのまま走って、走って、いつも小春と打ち合わせしたり、ネタの練習したり、反省会をしたりする池の前へ来た
うちは何かあったとき必ずここへ来る
モノマネの練習する時も、テニスの試合で負けた時も、小春にお弁当ほめられた時も、いつもいつもここに来る
池に写った顔は涙でグシャグシャでスッゴく醜かった
どこかで始業の鐘が鳴るのを聞きながらうちは1人泣きまくった

ごめん、ごめんなさい、ごめんね…小春



あれからどの位たったのだろう
泣きすぎた目は真っ赤に腫れ上がっている
小春に笑われちゃう…そう思ったらまた涙がでてきた
うちの中心はいつだって小春やった
多分それは、いままでもこれからも変わらない
もう潮時かもしれない
ちゃちな空想少女でいられるのも、小春の隣にいられるのも
全国大会が始まる、それが終われば本格的に受験も始まる
その前に、小春の負担が少しでも軽いうちに
また、涙が溢れた





「みーつけた」

突然、後ろから抱きしめられた
よく知った声、よく知った温もり、よく知った肌の色

「こは……る?」

おずおずと名前を呼べば腕を離されくるりと向き合わされた

「忘れた携帯も取りに来ないし、教室にもいない、部活にも来ない…心配したのよ?」

小春は言いながらうちの頬を拭う

「あらあら、可愛い顔が台無しじゃない!どうしたの?虐められた?」

うちはその優しい声にまた泣き出してしまった
困った様に慌てる小春のワイシャツをそっと掴んだ

「ごめん…小春」

「ユウ?」

「好き」

小春は一瞬だけ目を大きく見開いたかと思うと拭っていた手のひらでうちの顔を固定させるとそのまま顔をよせてキスされた

「え…?」

小さく出た声は無意識のものだった
ゆっくり離されてからまた塞がれる
ギュウと無意識にワイシャツを握る手のひらに力が入る
いきなりの事でうちは完全にテンパっていた
やって玉砕覚悟で告白したら何も返されんとキキキ…キスされとんやで!!
落ち着け言う方が無理や!!

「ん…こはっ……る…!?」

名前を呼ぶとハッと我に返ったのか唇をはなされる
それからギュウウウウとまた抱きしめられた

「こは…る?」

「ユウ」

いきなり耳元で、それもいつものオネエ声じゃない低い地声で囁かれて肩が大きく跳ねた

「もぅ…1人で泣くんやないで」

そう言われてうちがわけわからんまま小さく頷いたら体を離されまた今度はちょっと触れるだけのキスをされた

「帰りましょ、みんな心配してるわ」

いつの間にか涙の引っ込んだうちの手を小春が引く
スタスタと前を歩く表情の見えない小春の背中にうちは声をかけた

「こっ小春!」

「ん?」

「さっきの返事…」

そこまで言って小春がうちの手の握り方を変えた
さっきまでの小春の手のひらにうちの手のひらが包まれるようにやなくて、小春とうちの指と指を絡めるような繋ぎかた
それは、そうゆう事でいいんだろうか
小春を見やれば耳が真っ赤やったからうちは嬉しくてぎゅって手のひらに力をいれた
そしたら小春も握り返してくれたからうちは嬉しくなってまた涙が出そうになった
でも、やっぱり帰る時にでもちゃんと言葉で聞いてみよう
先ほどより軽くなった心でそっと叫んだ

好き、大好き、愛してる小春!!!







(なんか違う気がする…対なの?続きなの?因みに小春はユウが可愛すぎていつも(色んな意味で)必死。くわさんいかがでしょう…?)