いつだって待ち合わせの30分前には待ち合わせ場所についてしまう
アイツが時間通りに来る事なんて滅多にないのに
それにしても

「遅すぎるやろ」

待ち合わせは11時、今の時間は1時、待ち合わせの時計台にアイツのくる気配は一切ない
朝ご飯を食べてきたとはいえ流石にお腹も空いてきた
初めてはいつもの事だろうと思っていたがこんなに遅れるのは初めてである
何か事件や事故に巻き込まれたのかと思い携帯に何度も連絡を入れたが一向に返事がない

「どないしよ…」

2時間も同じところにいるのは怪しいしナンパもひどい

「家…行くか」

白石はショルダーバッグを掛け直すとコサージュのついたパンプスを翻した




ピンポーンと軽く安っぽい音が辺りに響く
しかし、部屋の住人からの返事はない
恐る恐るドアノブに手をかけてみればカチャリと軽い音を立てて扉は開いた

「不用心やなぁ…」

ため息をつきつつ部屋に踏み入れる
既に幾度となく出入りしている慣れた空間である
鼻腔いっぱいに太陽に似た彼の香りが広がる

「おじゃましまーす」

畳一間を襖で無理やり二間にしたような正方形をした四天宝寺の学生寮
入ってすぐ右手の簡易台所には昨日の夕飯であろう丼と箸と湯のみが一人分あるだけだし目の前には小さなちゃぶ台と木製の棚が一つある以外には脱ぎ散らかされた制服と学校から持ち帰られて手を着けられていないであろう鞄だけだ
と、なれば彼の居場所など簡単に察しがつく。もとい、一ヶ所しかない
スパン…!!と心地よい音を立てて白石は勢いよく襖を開いた

「やっぱりか…」

その目下で目当ての人物はすやすやと寝息をたてていた
思い切り溜め息と肩を落とすとぐったりとその場に座り込んだ
こっちの気など知らずに心地良さそうな寝息をたてて眠るその顔に指を伸ばすと
思い切り抓ってやった

「いっつぅぅ…!!」

余りの痛みに起き上がったその鳩尾に今度は拳を食らわせる
まぁ体格差などからたいした威力はないだろうがそれでも寝起きにいきなりな襲撃としてはまずまずの成果をあげたようだった

「く…くら??」

鳩尾を抑えながら半泣きの巨体がようやくこちらを向き白石はもう一度盛大な溜め息を吐き出した

「どげんしてここにいると?」

白石はその言葉に無言で時計を指差した
時計はすでに二時を差そうとしていた

そこでようやく事態を飲み込んだらしくポリポリとばつが悪そうに頭をかいた

「寝過ごしたばいね…」

チラリと伺った白石の顔からは不機嫌さがありありと見えた
それもそうである
基本的に交互に入る男女テニス部の休日練習は男テニがない日は女テニが入る、もしくは大会前などは半分ずつ使用となる為男女テニス部が休みになる休日は2ヶ月に一度のコート整備の日か大型連休に限られるのである
あらかさまに不機嫌そうな顔をする白石に平謝りするしかない千歳

「まぁ終わったことは仕方ないし、許したるわ」

「ほなこつスマンばい…」

そう言うと白石は仕方なさそうに、でもどこか嬉しそうに微笑んだ

「ばってん、これからどうすると?もっかい出掛ける?」

しかし今から出掛けたところでバタバタするだけで終わってしまいそうな時間である

「いや、今日はこのままここで家デートにする」

「それじゃいつもと変わらんばいよ?」

千歳の言うとおりそれでは学校や部活帰りに千歳宅に白石が来るのと大差ないしそれはさほど珍しい事ではない

「ええねん、別に。うちは千歳さえおればそれで」

そう言いながら白石はいまだ布団の上に座ったままの千歳にすり寄ってきた

「ならせめて、普段はしない事しちゃるけん」

千歳は白石の耳元でそう囁くと片手をひき自分の足元に組み敷いた

「なっちょ…千歳!?」

いきなりの事に軽いパニックを起こし暴れようとするが両手は千歳により片手で抑えられてしまった

「普段は明日も学校やら部活やらでヤらせてくれん、ばってん明日も部活も学校も休みばい」

千歳は可愛らしくニッコリと笑った

「なっ……っ!?」
往生際悪く口答えをしようとする白石をよそに千歳はスルスルとミニスカートから覗く白い太ももに手を這わした

「ほなこつ、こんなかわいい格好して彼氏の寝室に入ってくるなんて無防備すぎるとよ」

「それっは、千歳がっ待ち合わ、せにこんから…っ」

白石の言葉を受け流しながら千歳は手を進めていく
抑えられていた両手を解放されたと思えばおもいきりトップスと下着を剥がされた

「ひぅ……っ!!」

いきなりのの事に短く声を挙げる白石
すでに肌寒くなっている外気にいきなり晒された乳首が赤く熟れ始めていた

「なんだかんだ言いつつ白石はやらしかね、ここもうこんななっとるばい」

そんな白石を揶揄しながら千歳は早く触ってと無言の主張をしているようにも見える小さな乳首を指先で軽く弄る

「あっや…」

弱いもののいきなりの刺激に思わず声を挙げる
慌てて口を抑えるがそれも剥がされ再びひと括りにされ押さえられた

「声…聞かせなさって」

そういい片方の乳首を口に含む
唇ではんだり舌でなぶったり気まぐれに歯を立てる

「やっあぁ…あっ…」

短い嬌声を繰り返しながらイヤイヤと駄々をこねるように首を振る白石をよそに千歳は白石の両手を抑えていない方の手を再びスカートに忍ばせた
白い太ももを撫で回し内側から起用にスカートのホックを外しファスナーを下ろす

「やっ…!?」

白石が気づいた瞬間にはスカートと下着は纏めて脱がされていた

「あーぁ、もうこぎゃんなっとるばい」

自分も寝間着代わりのTシャツを脱ぎながら千歳は呟く
羞恥に目尻に涙を浮かべながら白石は顔を真っ赤に染めて視線を逸らした

「むぞらしか…」

千歳は白石の細い足首を掴むと膝が胸に付くくらいまで折り曲げて持ち上げた

「ひっ…やぁ、こんな…あぁっ!」

そのまま足の間に顔を持っていくと秘部をベロリと舐めた
薄い茂みに覆われたそこはトロトロに溶けておりそこから溢れ出る液を舐めとる様に舌を這わした

「あっひんっやっやぁ…!」

熱い舌に蹂躙されると感触が直に伝わりより一層、自分のどこが相手の何によりどうされているかが明白にわかり更なる羞恥の坩堝に追い込まれる

「やっそんなっ、あんっ…に、した…らっ」

「何が嫌と?ウソはよくないばい」

お仕置き、とでも言うかのように千歳はそこをジュルル…と音を立てて吸い上げた

「ひぃんっ!…やっ…イ…イくぅっ…!」

「イってよかよ」

千歳は布団を必死に掴み快感に耐える白石に追い討ちをかけんばかりにぷっくりと膨らんだクリトリスリを押しつぶした

「ひっひゃぁぁん…!」

ビリビリと電流の様な快感が背中を伝い足の先までツンと伸ばしながら白石は達した

「そんなによかったと?」

肩で息をする白石に涼しい顔でそう問えばキッ…と睨まれた
しかし真っ赤な顔で生理的な涙を流しながらのそれでは威嚇になどとうていならずただ扇状的に千歳には映った

「睨みつけるだけの体力があるなら大丈夫たいね」

千歳は白石の足首から手を離すと自らのベルトに手をかけた
取り出したそれはもう充分な程にそそり立ち赤黒くグロテスクな装いであった
何も言わぬまま入口にあてがうと中へ中へと促す様にヒクヒクとソコは収縮する
その様子にクスリと笑うと白石の腰を掴み一気に貫いた

「ひっいぃぅぅん…!!」

息なりの事に一瞬息を止めつしまいそれに連動するようにキュッと膣が窄まったがなんとか持ちこたえる
そっと両手の指を絡ませ白石の手を布団に縫いつけるようにしたまま唇をぶつけ舌を絡ませる
そのままゆるゆると腰を動かし慣れてきたところで律動を開始する

「あっ…んっ…あぁっ…」

口付けをされたまま動かれ途切れ途切れに唇の間から声が漏れる
白石の口からはどちらのともわからない唾液が溢れてゆく

「あぁっん…!」

ある一点を貫けば白石が大げさに肩を震わせた
すれば、しめたとばかりに千歳はソコばかりを抉るように刺激する

「んっんぅ…あっあっ…」

白石がギュウッと絡めた指に力を加えた
絶頂を予期した千歳は更に激しく腰を打ちつける

「ひっ…だっ……めっ…イ…く!!!!」

うわごとのようにそうそう叫びながら白石は達した
千歳もその締め付けに耐えられずコンドーム越しに熱を吐き出した

ようやく唇を離し口元を拭ってやる
白石は絶え絶えの息を繰り返すだけで動く気力も喋る体力もない様だった

「あっ……」

一息ついてから千歳はズルリとソレを抜き外したゴムの口を縛り側のゴミ箱に投げ入れた

「久々にヤるんはそないによかったと?」

汗でへばりついた前髪を書き上げながらそういえば

「あほぅ…」

小さくそう言われまた睨まれた
それに苦笑してからとりあえず箪笥から下着を出し部屋着を身につけると千歳は一通り後始末をすませる
動けない白石には体を拭ってから前開きのめったに着ないパジャマの上だけを着させた
それから未だに湿っている布団に二人並んで寝転がる

「次の…」

「ん?」

「次の休みは映画観に行くけんな」

「了解ばい」

「お昼は駅前の喫茶店やかんな」

「はいはい」

「その後は隣駅のショッピングモールで買い物や」

「うん」

「映画とお昼は千歳の奢りやかんな」

「わがままな姫さんたいね」

頭をポンポンと撫でればそれまで背を向けていた白石が体ごと振り向いた

「でも、そんなウチも好きやろ?」

ニヤリと妖艶に笑う恋人に千歳は苦笑した

「よくわかってる姫さんたいね」

キュウッとか細い体を抱きしめる

「やけん、うちかて同じくらい千歳の事好いとるよ」

「ほなこつ?」

「二時間待ちぼうけ食らわされた挙げ句セックスさせてあげる位」

これには参ったと言わざるを得なかった千歳が小さく頭を下げればクスクスと白石は笑った

「明日は」

「ん?」

「こうして、二人でのんびり過ごすばい」

「ん、そんな日もええな」

白石は小さく身じろいでから千歳の厚い胸板に額を寄せた
千歳は再び抱き直すと端に追いやられていた掛け布団を手繰り寄せ被せた
しばらくして聞こえてきた規則正しい寝息に笑みを浮かべ額にそっと口付けを落とすと自らも深い微睡みへ落ちていった






(甘ければいいな…長い)