「じゃあお願いね、」

目尻を下げつつも義姉は兄の左手をしっかり掴んでいた
うちは口では気のいい返事をしながら内心なんでよりによって今日なんや…と猛烈なツッコミをしていた
今日は謙也さんとデートの日やった。昨日の夜は鏡の前で1人ファッションショーなんかする位に気合いも入っていた
ベッドでもなかなか寝付けなくて携帯を開いては謙也さんからのメールを見返した
それなのに、低血圧なうちの休日にしては珍しい早めの朝、兄と義姉に頼まれたのは甥っ子の面倒やった
懸賞で当たったペア旅行らしいんやけど甥っ子を預けようとしたうちの両親が朝早くから親戚の法事に行ってしまったらしい
みんな帰宅は明日の夕方らしいけんうちの部活のない貴重な土日は甥っ子のお世話で終わる事が決まった
だけどその事を謙也さんにメールで伝えたら謙也さんが家に来ると言いだしたので快くどころか土日は謙也さんに会えないとおもっとたうちは高まるテンションを抑えて冷静をそぶって了承した
こぶつきなんは気になるけど家デートにはかわりないけん


「いらっしゃい謙也さん」

「おじゃましまーす…おっこれが例の甥っ子かぁ」

「いらっしゃ〜い」

うちに来るなり甥っ子の頭を撫でる謙也さんに甥っ子も甥っ子でお互い人懐っこいせいかすぐに打ち解けたようだった

「お昼ご飯はチャーハン位なら作れますよ?」

「せやったら俺がメッチャうまいチャーハン食わしたるで!」

冷蔵庫を覗きながらそう言うと居間に胡座をかきながら甥っ子と遊んでいる謙也さんが声を上げた
正直その姿はお父さんのようで思わず頬がゆるんだ
謙也さんの作るチャーハンは冷蔵庫から適当に選んだ材料を適当にぶった切りにして適当に調味料を振りながらご飯と一緒に炒めただけにしか見えなかったのにスッゴくおいしかった
甥っ子がいつもは残すピーマンすら平らげていた事は義姉にはだまっておく事にした

「そういえば夕飯はどうするん?」

「あー何もないので買い物行ってカレーでも作ろうかと」

「おかいもの〜!かれ〜!」

謙也さんによじ登っていた甥っ子が買い物とカレーという単語に反応したのでその勢いのまま買い物に行くことにした

「おかいもの〜おかいもの〜」

「せやなーお買い物やなー」甥っ子は謙也さんにべったりで謙也さんの手を引っ張りながら歩いている
謙也さんも謙也さんで楽しそうに槌を打ちながら甥っ子ばかりに構っていた
うちはと言えばそんな2人を横目に見ながら買うものを考えていた
スーパーにつくと謙也さんがカゴとカートを持ってきてくれてそこにカレーの材料を入れていく

「カレー甘口でええん?」

「あっはい」

赤いラインの入った黄色いカレーの箱をかごに入れた謙也さんがじーとうちの顔をみつめてきた

「なんかこーしてると新婚さんみたいやな」

「なっ…!?」

謙也さんがあまりに突然そんな事を言い出すので思わず大声を上げてしまった
慌てて周りを見渡すが時間帯的にかあまり人はおらずホッと胸をなで下ろす
もう一度謙也さんと目を合わせるといつもの人懐っこい笑みを向けられた

「そう遠くない未来に俺らも「ちぃ〜まま〜これかって〜」

謙也さんの台詞を中断させたのは菓子売場にいるはずの甥っ子だった
無意識に視線が鋭くなるが本人は気にしない様子で小さな箱を差し出した

「ちぃまま、これかって!」

差し出したのは戦隊ヒーローのフィギュア付きのお菓子



「おー懐かしいなー俺も昔よう買ってもらってたわ…ところでちぃままって?」

「ちぃままってんは義姉さんがうちん事ちいさなお母さんゆー意味でちぃまま呼ぶん」

言っててなんだか恥ずかしくなってきて顔を俯けた

「ちぃままとちぃぱぱ」

甥っ子はそう言うとうちと謙也さんを指差した

「俺がちぃぱぱなん?」

「うん!!」

「……そか!」

大きく頷いた甥っ子に対し謙也さんは嬉しそうに笑った

「光、光、俺らパパとママやて」

「…な……かっ会計行ってきます!」

さっきにしろ今にしろなんでこの人は真っ直ぐに他人をみながらあんな事が言えるのだろうか
思わず会計へと逃げ出してしまった


「ちぃまま行っちゃった」

呟いた甥っ子をみて謙也は悪戯っ子のような笑みを浮かべた

「ちぃままには内緒やで?」






それから帰って甥っ子も混ぜて3人でカレーを作って食べてから甥っ子と懐かれた謙也さんがお風呂に入ってる間に片付けをしてうちも風呂に入った。テレビをみて微睡んでいたら甥っ子がうとうとし始めたので少し早かったけど兄と義姉のダブルベッドを借りて甥っ子を真ん中に川の字になって眠りについた寝るときに謙也さんがこっそり手を繋いでくれたのがすごく嬉しかった
最初は正直スッゴく嫌だったけどこんなんならたまーになら甥っ子の世話も悪ないと思った
けど次はやっぱり2人っきりがいいなぁとも思った




翌日に謙也さんが帰ったあと兄夫婦にちぃぱぱが買ってくれた戦隊ヒーローフィギュアを自慢している甥っ子がいた







(最後に諦めた感が…謙光+甥かけて満足)