柔らかいって気持ち悪くない?
だって骨と筋でできてる人間がさぁ
柔らかいんだよ
あんなに細い癖に一部だけ出っ張って柔らかいんだよ
気持ち悪いったりゃありゃしない
太ってる奴が柔らかいのはなんとなくいいんだ
全部が柔らかくて膨らんでる訳だから
俺はあの脂肪の塊が2つだけ不自然にくっついてる事が気持ち悪いんだよ
あんなのの一体なにがいいんだい?
俺には全く理解出来ないよ







「………で、要するにアナタは何を言いたいんです?」

観月は温くなった紅茶を手持ち無沙汰にティースプーンでかき混ぜた
カップの底にたまっていた靄が溶ける
これだから安物の紅茶は嫌いだ

「だから、全部細くて固くて可愛い観月ちゃんは完璧だなって話」

千石は向けられた蔑む様な視線は全く気にしていないようでズズ…と音を立てながら自分の出した近所のスーパーで一番高かった紅茶を啜った

「あなたは天性のホモだったんですね」

観月は眉間の皺をさらに深くしながら音も立てず紅茶を口に運ぶ。例え口に合おうがなかろうが彼が自分の為だけに出したものを拒むなどという理由にはならないのだ

「そうゆう事になるのかな?」


千石は唸る様にそう言ったが実際のところはそう深くなど考えていないのだろう
この話は別に内容など深い様で浅く要は彼との会話の話題にすらなればそれ以上の価値もそれ以下の価値も持たないのである

「違うんですか?」

しかし観月はそれに気づかない。頭が切れる事は認めるがそれはデータの上になるテニスにおいての話でありそれ以外では千石の方がよっぽど上手である。しかしプライドの高い彼の為に千石は間の抜けた男に成り下がるのだ。その分ときたま彼のプライドを折った時の快感は耐え難いものがあるのもまた事実なのだが

「う〜んどうだろう」

そのセリフを聞いた観月が一度はソーサーに戻したカップに再び口付ける。それはいちいち優美な動作だなぁ…と思う

「アナタは本当によくわからない人ですね」




「まぁ…俺が観月ちゃんが好きってのが分かれば構わないからね」


バチリと彼と目があった
真っ赤になる彼は本当に可愛らしくやっぱり完璧に俺好みだなぁと心の中で惚気てみた






不完全な完璧
(まぁ君ならきっと柔らかくても愛せる)

千観が好きです