「真奈美は大学どうするんだ?」


「え?大学?」



お昼休み。九ちゃんとお弁当を食べていたら、急にそんなことを聞かれた



「次の時間進路調査だろ?」



あぁ、そう言えば。


なんで忘れていたかというと…とゆうか、考える必要がなかったのだが。

担任は言わずもがな、あの、銀八先生。

まともに進路相談できた試しが無い。

だから、進路調査なんてただの時間の無駄だった



「僕は家を継ごうと思ってるんだ」


「道場だっけ?大変ね」


「うん…だけどそれが家の為になるから」



そうか、進路って、大学に行くだけじゃないのか…

私は何も考えずに、ただ良い大学に行けばいいと思ってた



「真奈美は大学に行くんだろ?」


「うん、一応そのつもり」


「真奈美なら良い大学に行けるさ」



にこっと笑って言う九ちゃんに、つられて私も笑う。

けど、なんだか、もやもやしていた。





みんなはそれぞれ、ぼんやりとでもやりたいことがあって、それに向かって進学とか就職とかを考えてる

けど私にはやりたいことがない




海外出張中の両親の仕事の事はよく知らない

今までずっと無関心だったから



二人はなんの仕事をしてるんだろうか。

海外出張ってことは、海外向けの仕事なのだろうか。



やりたいことも、好きなことも、私にはない







進路調査の紙に何も書けず、気付いたら他のみんなはとっくに進路相談が終わって帰ってしまっていた

いけない、と思って立ち上がると同時に先生が教室に入ってきた



「おーい、残りは真奈美だけだぞ?」


「す、すみません…」


「んー?いいや、ここで話そうか」



先生は私の側の椅子を引いて座る
仕方なく私もすとんっと腰を下ろす



「珍しいなぁ…真奈美が悩むなんて。もしかして、最後まで残って銀さんと二人っきりでお話したかったとか?」


「…」



いつもの先生の冷やかしにも反論できない

こんなに悩むなんて思ってもみなかった



いつもと様子が違うと思ったのか、先生は今度は真剣な顔つきになった



「どうした?」


「私、皆んなと違って、やりたいことも、好きなことも無いから…」



進学するのが正しいのか?

進学するとしてどんな大学に行けばいいのか?



「分からないんです」



こんなこというと、先生はきっと困る

先生にとって、こうゆう生徒が一番面倒なのかもしれない


先生に…嫌われたくないな…




「俺だって…最初から教師になろうと思って大学に行ったわけじゃない」



先生は優しく微笑みながら言う



「将来こうなりたい、あぁなりたいって、目標持つ事は大切だし、持ってる奴は強いけどな?俺みたいになーんも考えないで教師になっちまうのもいる。

でも、いざ教師になってみたら、大切なもんが沢山できて、いい教師になろうと思った」


「大切なもの…?」




私がきくと先生は少し照れくさそうに答えた




「お前ら、生徒」




先生の口から、生徒が大切だなんて、出てくると思ってなくて、なんだか恥ずかしくなって視線を逸らした




「順番は違っても、なんとかなるさ。なりたいと思って、なれるやつなんかほんの一握り。深く考えすぎるなよ。大学なんて人生のうちのほんの数年。就職するのもありだしな。」



考えすぎ…なのか



「んー、真奈美は本が好きだろ?本は書く仕事だけじゃねーぞ。出版、編集、印刷、カバーのデザイン、本の宣伝広告、本屋、司書…あとは…」




先生は私が好きなものを良く知ってる

ううん、私だけじゃなくて、クラス全員の。


いつもの無駄だと思えるお喋りの中で、先生は私たち生徒の好きなものや興味があることを聞き出して、よく覚えてる

まともに授業はしてくれないし、ちゃらんぽらんだし、どうしようもないけど…




でも、やっぱり私、先生を尊敬してる





「国語の先生とか…」


「!?」



私がいうと、先生はびっくりした顔をして、しばらくしてから、満面の笑みを浮かべた




「真奈美ならいい教師になるだろうな!」








調





(俺のお嫁さんって、進路も考えといてw)

(な、なに言ってるんですか!)









2015.05.06 執筆



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