「銀八先生のどこが好きなんだ?」


「へ?」



日曜日

今日は九ちゃんと一緒に遊びに出ている


ケーキを食べながら話をしていると、唐突に九ちゃんはそう問うてきた


びっくりして彼女に視線をうつすと、真面目な顔で言っている事がわかった

まぁ、九ちゃんは冗談なんかいわないけれど



「別に私…」


「ごまかしても無駄だ。僕にはわかる」


「……」



九ちゃんには嘘つけないなぁ…なんて一瞬だけ思って頭を振った


−−違う

私は先生が好きなわけじゃない



「本当に好きとかじゃなくて…」


「?」



私が考え込むと九ちゃんは首を傾げた

あ、可愛い。…なんて言ったら怒られちゃうから言わないけど



「そうだなぁ…強いて言えば“憧れ”とか“尊敬”に近いのかな…」


「尊敬?あれにか?」


「そうそう。あれに」



自分でも酷い言い方してるなって思うけど、あの先生に尊敬なんて笑えちゃう

でも好きとかじゃなくて、それに近いと思うの



「銀魂高校の入学式の日にね。先生が私を助けてくれたんだよ…」





入学式。私は新入生代表の挨拶をしなければならなくて、緊張でどうにかなりそうだった

元々、人前にでるのは苦手だし、人と話すのも得意じゃなかった私は緊張の余り具合も悪くなっていた


『具合が悪い』と言えばこの場から逃げられる。だけど、妙に真面目な所がある私にはそんな事できなくて、

ただただ、時間だけが過ぎて、緊張がピークに達し舞台袖で泣きそうになっていた時だった


『お前大丈夫か?』

『…っ』


声をかけてきてくれたのは銀八先生だった

白衣に眼鏡、最初は保健室の先生かと思った


『緊張して…気分が…』


言ってしまった後に後悔した。気分が悪いなんて保健室の先生に言えば、即保健室行き

でもこの場から逃げ出せると思ったら少しだけ安心できて、でも罪悪感が残った


『そりゃこの人数の前で挨拶とか緊張するよなぁ』


明るく軽い声色の先生は、そい言いながら私の手をとった

びっくりしていると先生は、片方の手を白衣のポケットに入れて何かを取り出した


『上手くいく、おまじない…な?』

『…っ』


先生がポケットから出したのは赤いリボン

それを先生は私の指に蝶々結びした


『うまくいく。行ってこい』

『…はいっ』




先生のおまじないのおかげか、挨拶はうまくいった

先生が担任だと知ったのはその後の話だ



「…だから憧れかな」


「……」



私の話を聞いて九ちゃんは目をぱちくりさせた

私が首を傾げると九ちゃんは口を開いた










(好きと言わずになんと言うんだ…?)


(へ?)




2012*03*11 執筆



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