「なー田噛―」「あ?」

なんか様子おかしくね?と平腹があたりをきょろきょろと見渡して言う。
様子がおかしいなんてものじゃない。なにが起こったのか、普通の廃病院は変異し壁も赤黒く血塗られている。
いったい何が引き金となったのか。
一応肋角さんに連絡をいれて探索を再開した。





う〜どこもかしこも気持ちが悪い。
カラカラ、と動いて突進してくるストレッチャーとか開かない病室のドアががんがん叩かれたり、そういうことが起きるたびに腰が抜けそうになる。
が、ある程度の心霊現象が出尽くしたため割と気が楽になってきた。

気持ち悪いけれど血塗られた壁も見慣れてきたし。
キイイ、と軋んでドアが開く。ここも病室だろうか。入って見渡した瞬間、白いぼんやりとしたものが目に入る。
白いユニフォーム―――ナース服―――をまとった黒いショートヘアの女性。
目は死んでいてこちらに目もくれず壁の向こうへとすり抜けていった。
あんなにはっきりと見えているのは久しぶりで心拍数が上がる。
病室はもぬけの殻で特に何もなさそうだ。
私は心臓を落ち着かせるように胸に手を当てると隣の病室へと入った。

右のベッドにはなにもない。
ただ少量の血痕がシーツに染みついているだけ。
左のベッドはカーテンが閉まっていてすごく嫌な予感しかしない。でもそこにヒントとか鍵とかあるかもしれないし。
全くホラーゲーム気取りですすんでいるけれどもそれでいいのかもわからない。
けど何もしないのは嫌だし。

意を決してカーテンを掴み、一気に開く。

「う、わ!!!!」
顔をどろどろにした青いパジャマをきたものが私に襲い掛かってくる。
勢いをつけてカーテンを開いたのに襲い掛かられて重心が傾き私の体は倒れた。
霊体のくせに重たいなあ、でもやっぱり冷たいし、私の指の先からも冷たくなっていくような気がしてくる。気がしてくるんじゃなくてそうなんだろうなあ。臭いなあ。
ぎりぎりと締められる首と薄れていく意識と。
抵抗しても動けなくて力が抜けていく。
なんで廃病院とか来ちゃったんだろう。
そう後悔した瞬間にさらさらとのしかかっている体が溶けて首が楽になった。

「…げほっ、げほっ、」

解放されたというのに息が苦しい。
新鮮な空気が肺に染みる。

「なーお前何してんだ?」
きもだめし?と言って私の顔を覗き込む金の眼。
人だ、と認識すると涙腺が緩み涙が出てきた。

「うわ!田噛どうしよ!泣いちゃったんだけど!」
「知るかよ、」

見上げると面倒くさそうに立つもう一人の男の人。
緑色の詰襟?のようなものにベルトをして同じ色のズボンに黒いブーツ。
頭に帽子もつけて…軍隊さんだろうか。
でも手に持っているのは武器になるのだろうか?スコップとつるはし。




序章、最終宣告












やっと会わせられました