電波とかなんかそういうことを言うのはやめて聞いてほしい。 私には霊感がある。
っていっても学校へ行く道すがらぼやぼやとしたものが見えたり、猫がいたり、知らない血みどろの人に手を振られたり追いかけられたり、とかそんなことはなかった。ほんとうに少し、だけ。
最近は遠縁のおばちゃんのお通夜にいったとき。おじさんたちがお酒をかわしながら昔話に花を咲かせているのをにこにこと笑っているのはたしかに亡くなったおばさんだった。
だから怖い思いはしたことはあまりしたことがない。だけど見えたとしても話とかはしない。見えてるのは黙っとく。見えてる素振りもしない。そう勝手に自分で決めた。
「ここ…廃病院…?」
大学の帰り道、電車から見える桜が綺麗で途中駅で降りてみた。 川沿いを桜を見ながらふらふらと歩いて揺れるトレンチコートは最近買ったもの。 歩きたい気分になるとは思わなかったけど踵が低いパンプスを履いてきてよかった。
そのまま住宅街とかを歩いて通りすぎてたどり着いたのは廃病院。 といってもそこまで古くはなさそう。外はまだ明るいしおばけなんて出なさそう。 錆びている鎖をまたいで私は扉を押して中に入った。
「任務内容を説明する」 「はい、」「はーい」 「東地区の廃病院にいる亡者を捕まえてきてくれ。元は無害だったらしいが被害が出たらしい。特に難しくもなさそうだが遅くなるようなら応援を送る」
黒髪に橙の瞳の青年―――田噛は後ろ髪をがしがしと掻いた。 「病院かーなんかおもしれーことあっかなー」 黄の瞳を光らせる平腹を見やるとツルハシを担いで歩き出す。 「いくぞ平腹、めんどくせえからさっさと終わらすぞ」 「ほいほーい、」 平腹もシャベルを担いで立ち上がる。愉快そうに歩き出すこいつは好奇心でしか動いてない。めんどくせえことにならないといいがな、まあさぼればいいか、と考えつつ緑の軍服に身を包んだ二人の獄卒は次元の壁に穴を開け現世へと降りて行ったのであった。
更地に踊るは一輪の
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