大地くんと巨乳日曜日、水族館に行く約束をしていたのに急に練習をすることになったらしくて。私はバレーをしている大地くんが好き(邪魔しちゃいけないと思ってあまり見たことはないけれど)だから全然いいしレポートでもしてるよ〜と言ったのだけどしょぼくれたワンコのように「すまん、」という大地くんがなんだか可愛くて黒髪をなでなでとした。すこしツンツンしている短めの黒い髪。「じゃあ練習見に行っちゃおうかな〜」「え!」いやいや嘘だよおとなしくレポートしてるよ、そう慌てていった私に大地くんはニカッと笑って練習11時からだから。待ってる。そう言われて私は驚きを隠せないまま頷いたのだった。ギンガムチェックのパンツにヒールのないパンプス。練習ってどんなんで見に行ったらいいかわからないけどこれでいいよね。そう独り言を言って家を出る。一年前に通っていた烏野高校はほんとすぐそこだ。日曜日に部活のOBが来ることはよくあることだし問題行為を教頭に見つからない限り特に咎められることもない。私は第二体育館の扉をカラカラと開ける。「ナイッサー」「オイ日向おせぇぞボゲェー!」「田中ナイス!」「うてーーー」体育館の中のむんとした熱気と掛け声。シューズのキュッキュッという音。そしてボールの跳ねる音。なんだかきらきらとしていて私は思わず息を飲んだ。扉を開けたまま立ち尽くす私にパタパタと駆け寄ってくれたのは潔子ちゃんでわたしはぱくぱくと口を開いた。「あのっ…潔子ちゃん、あの私っ…」大地くんの彼女の、とかいうのは変だし言葉をなくした。「…名前さん」入ってください、と言ってくれて対して話したこともない私の名前を憶えていてくれた彼女に私は泣きそうになった。差し入れを武ちゃん(あたりまえだけどなんも変わってない!)に渡して座る。黒髪の子が打つ早くて強そうなボールを軽々と上げた大地くんはかっこいくて私はひいき目なしに本当に素敵な人だな、と思って恥ずかしくなった。練習が終わってみんなが着替えたあとに部室に入れてもらう。潔子ちゃんが整理しているのだろうか備品等は想像以上に綺麗に片付いていた。「こんなになってたんだねぇ」というと大地くんが深くうなずいて「来たことはなかったもんな」と言う。なんだかにやにやとした顔のオレンジの髪の子、サーブの強かった黒髪の子が「おつかれさまっす!」と言って部室を出て行った。えへへ、大地くんはこういうところをいつも使っているのだなあ、と部屋を見渡すと端にアイドルのポスターが貼ってある。そこに貼ってあるマスキングテープに目をやって私は固まった。金髪の女の子の上に貼られた『巨乳大好き 大地』の文字。私はふらふらとして部室を出た。「あっ名前それはっ…」「大地くん、」私に手を伸ばした大地くんの姿勢が固まる。「ハイ」「今日、うち来なくていいからね」疲れてるだろうから体休ませて。私はそういって家を出たのだった。もちろん視線は肩甲骨の先の膨らみを見ながら。