「突然じゃが君には監督生になってほしい」

は、と出た声は思ったよりも大きかった。私のその失礼な態度を校長は気に留めた様子もなくにこにことしている。
が。

「かんとく、せい。」

「まあ、監督生といっても世話人のようなものじゃ、気軽にするといい」

気軽って。気軽って…。ホグワーツのしきたり、ルールなどもろくに分かっていない私に何ができるというのか。そう思っているのが分かったのだろう。

「寮には学年に二人監督生がいる。なにも君だけが責任を負うわけじゃないからの。」

な、スミス。そう校長が言うと奥のカーテンから緑色のローブを着た金髪の男の子が出てくる。彼の胸にもきらり、と光る監督生バッジがあって。ローブからちらりと覗いた灰色のスラックスはなんだか高級そうだった。

「寮の監督生が二人消えてしまっては困るからの、スリザリンの監督生スミスに君はしばし預けよう。なにもう一人も一年生の引率を終えたらすぐに来るはずじゃ。」

頼んだぞ。そう言われて軽く顎を引いた彼は少し厳格そうだと思った。
監督生とはやっぱりこういう人ばかりなのだろうか。
ついてくるように言われ私はあわてて校長に頭を下げながら彼についていった。






「スリザリンの監督生、エルヴィン・スミスだ。よろしく。」

「え、…っとグリフィンドールに入りました。名前・苗字です。よろしくお願いしますっ…」

手を握ると彼の手は思ったよりもずっと暖かかった。

長い足ですたすたと歩いていく彼を私はまたあわてて追いかける。

「まずさっきの組み分けの儀式を行ったのが大広間だ。毎日の食事などはここで四寮全生徒が集まって食べる。それから…」

ホグワーツの主な説明を彼がしてくれる。追いかけていたはずがいつの間にか彼の歩きはゆっくりになっており私の隣を歩くようになっていた。

「なんだかうれしそうだな」

「えっ…」

「顔がゆるんでる」

私はなんだか恥ずかしくなった。顔が熱い。緩んでたなんて私はどんな顔をしていたのか。

「あこがれ…だったんですこの学校に入ってこの制服着るの」

だからスミスくんにこうやって説明してもらうと明日がどんどん楽しみになっていって。
スミスくんはきょとり、としたような驚いた、ような不思議な顔をした。
こっちに振り返った彼の顔が何故か近づいているような気がする。
て、いうか近い。「あ………の、」


「おい!!エルヴィン!!!」

ばたばたばた、足音を鳴らしてくるのは黒髪のひょろりと高身長の男性。赤い裏地が見える。胸元に輝くバッジに私は彼が私とセットの監督生であることが分かった。

「早かったな、ナイル」

「お前に転校生を任せてられないからな」

スミスくんはかつんかつん、靴を鳴らして逆方面へと歩いて行った。
あいつに何もされてないか、そういうナイルくんに私は首をかしげたのだった。






mae ato