エルヴィンが内地から帰ってきた。彼が交渉などのため内地に行くことは珍しくはない。
だが今回は彼が上等な酒を持って帰ってきてくれたのだ。
「さーっすがエルヴィン!やることが男だねえ、いただきまあす!」
巨人を目の前にしたときのようにご機嫌のハンジは一人で瓶を開けグラスに注ぎ勝手に飲み始める。全く無礼講だなあ。そう思いつつグラスをリヴァイさんに渡すと「あのメガネとは大違いだな」なんていう微妙な言葉を頂いた。一緒にしないでください、と笑うと彼も口の端を吊り上げ笑った。
「名前、君も飲みなさい」
せっかく買ってきたんだ。そう笑ってくれるエルヴィンさんに頷いてグラスに口をつける。
ふくよかで気品ある香りと口触りのなめらかな深い味わいと爽やかさ。兵団で飲めるお酒なんてたかが知れていて、しかも私はお酒の味なんてわからない。
だけれどもこれは美味しい。いままで飲んだ中で一番美味しかった。
「美味しい、」
頬をほころばせるとエルヴィンさんも釣られたように笑う。飲みやすいけど度数高いから飲みすぎるなよ、と心配してくれたのが嬉しくて微笑む。
こんなに飲めるのだろうかと思っていた酒瓶がほぼ空きハンジが爆笑のピークを終えた頃。
「エルヴィン、大丈夫かその背中のは」
ボトルに残った酒を一気にボトルに入れたリヴァイが指差したのは軟体動物になってしまったかのようにエルヴィンの背中にもたれかかっている名前。
「名前、寝ちゃってるのー?なんだかふにゅふにゅ言ってるけど大丈夫なわけー?」
ハンジがぽんぽんと名前の頭を叩くとがくがく揺れる彼女の頭。頬だけではなく耳や太腿までが赤い。もう限界のようだ。リヴァイはグラスから零れる水滴がどうも気になるらしく逐一布巾で拭いている。それもまたハンジの食べかすを拭いては畳んで折り込むためもう限界の小ささになっている。
「もうそろそろお開きにしようか。」
新品を出してきたはずの蝋燭ももう短くなっていた。汚い食べかすやらに舌打ちしながらもテキパキと片付けていくリヴァイとそれをちゃかしながらよろよろとしているハンジ。
まあ彼女はなんだかんだ醒めるのがはやいから心配はいらないだろう。
そうハンジの心配よりも前に。
「名前起きなさい」
「んー・・・」
反応こそするが起きる気配はない。瞼がもぞり、うざったそうに動いた。
「リヴァイ、部屋に戻るよ。あとは任せた」
抱き上げた彼女は思ったよりも遥かに軽かった。軽々と抱き上げられた彼女はすやすやと寝息を立てていた。なんだか呆れたように笑ってしまう。
扉を開けて出ていこうとしたところでリヴァイがとめてきた。
「おい、エルヴィン。」
「どうした、リヴァイ。」
「酔った勢い…なんぞするほど若くねぇはずだ」
「ええ〜やだエルヴィン送り狼になるつもりい???」
彼の意図に気付き愉快で笑ってしまう。まさか泥酔した女性を襲うことなどしない。こんなことで笑えるだけやはり酒はまわっているのだろうか。呂律のまわっていないハンジの囃し立てがうるさい。
「善処しよう」
ふふ、と笑い二人は廊下へと消えていった。エルヴィンに担がれてベッドへと運ばれた名前に実は意識こそあったのはまた別の話である。
深海
みそさまリクありがとうございました!!
にやにやきゅんきゅん…うれしいです…!!!
晩酌、っていうことで四人で飲んでもらいましたがその後の展開はやはりエルヴィンさんに任せていただきました。もし楽しんでいただけたら幸いです…!ありがとうございました!