兵長がエレンくんを訓練(という名のしごき)をしている間に兵長の部屋を掃除する。
本棚にはたき掛けもして隅までほうきでごみもとる。もちろん窓の拭き掃除、サッシまでピカピカに磨くのも忘れずに。
汗を拭うが少し顔が汗ばんでいて気持ち悪い。机の上のばらばらに置かれている書類が気になって整理しているとシャツ一枚になった兵長が入ってきた。

「あっ、兵長」「ああ、ご苦労だ名前。」

ぽんぽん、と兵長が私の頭を叩いてくれる。直属の上司にあたる兵長は私が女だということもあるだろうが(ペトラにも同じようだからだ)優しくしてくださって。だけど心臓は高鳴らない。もう他の人に捧げてしまったから。

「あっ、この書類団長に届けるやつですよね、私持っていきます。」
「すまないな」

いえ、といいつつもどきどきしながら私は書類を抱える。もちろん一度トイレに籠って服装を正し化粧も確認してから私は団長室へと向かった。





人を愛することは馬鹿げたことだと思っていた。愛した者が壁外調査で死んでしまってからのことだった。もう調査兵団では人は愛せない、愛さないと思った。死んでしまったら後悔する。そして自分は所詮死なせてしまう人間なのだから。

「エルヴィン団長、失礼します名前です、書類をお持ちしました」

癒しの中に凛とした強さがある声。扉からひょこりと顔を出す彼女、揺れる髪にくりくりとした瞳。痛くなると同時に温かくなる胸。その気持ちがなんともうざったくて私は眉間の皺を親指と人差し指でつまんだ。

「団長、お疲れですか?」

真横からかがみこむように机に資料を置く彼女。セミロングの髪がかがんだ拍子にさらり、と垂れる。その動作がなんとも扇情的で私の指は無意識に彼女の頤をすくい引き寄せてきた。

「やっ、だんちょっ……?!」

体勢をくずした彼女が机の上に倒れこむ。資料が舞う、といったら理想的な様子かもしれないが実際は大きな資料やらがどさどさと落ちる。
彼女の唇は思ったより柔らかくて湿っていた。んん、と抵抗するように動く唇が愛おしくなってしかし抵抗しようとして胸板を叩く右手が邪魔で片手で掴みあげる。同じように
立体機動を扱い、ブレードを握っているはずなのに細い右腕。簡単にへし折ってしまいそうだ。ああ、そうか俺は。唇を離すと自嘲的な笑みが漏れた。
彼女の着ているシャツは襟元にボタンはなく二つほどボタンをはずしただけで白い肌と可愛らしい色合いの下着が覗く。名前の耳は真っ赤になっていて熟れた果実のようだった。
唇で優しく食むとびくり、と彼女は震えた。可愛い、そう思ってもう一度口づけようとすると名前は顔をくしゃくしゃに、目元を真っ赤に腫らして泣いていた。

「も…、やだエルヴィン団長っ…やめ、てくださっ…」

びり、と胸が痛くなるような泣き顔だった。だけれどもそれと同じようにさらさらと水のように冷たいものが心臓にはいってきた。
抵抗する手をベルトで縛り上げてベルトに手をかけ一気に下着まで脱がせる。ぽろぽろと落ちる雫はしていることとは反対にとても綺麗だと思った。




意味がわからなかった。いま私の体を弄っているのは憧れていた、好きだと思っていた団長の大きな手で。だけれどもその手は冷たくて。怖い、という気持ちが大きかった。
それでも体は彼の冷たい手を温めるかのように熱くなっていってそのことに対する羞恥さえも感じる。体が熱くなるからこそ縛られても尚抵抗していた腕に力が入らなくなって、エルヴィン団長はそのことに満足したような笑みを浮かべた。
その笑みに高鳴る心臓など捨ててしまいたい、彼に捧げると思ったこの心臓ごと。

「…ひっ…ゃ…や、やだあ…」

散々弄られた体は心とは裏腹に彼を受け入れる用意が出来ていて熱いものが触れる。もう逃げられないのはわかっていて私はぎゅ、と目を瞑ったその拍子にもう枯れていたと思っていた涙は落ちた。








「名前は兵団を外れることにする」

数日後、朝一でエルヴィンに呼び出されたリヴァイが部屋に入り見たものはいままで見たことないエルヴィンのだらけた格好と自分の部下のシーツをかぶった姿だった。
は、と出したはずの声は出なかった。名前でさえも目を大きく開け驚いている。

「私の子供を身ごもった」
「勝手にしろ、あとは二人で話せ」

奇妙な空気を感じ取ったのだろうかリヴァイはすぐに出て行った。
少しの沈黙とともに名前が絞り出すような声をあげる。その声は少しだけ枯れていた。

「責任、とかそういうのいいです」

無理矢理抱かれてから何日間か。体を求められても腕を縛りあげられなくてももう抵抗することはなくなっていた。そしてまた日中に見る彼の穏やかな笑顔に高鳴る胸さえも変わらずにあったのだ。

「私は君を壁の外に出したくなかったんだ。酷い男だね、」

金は一生生活できるだけ出そう。だから君は内地にいてくれ。そう言って背中を向けた大きな背中を名前は無意識に抱きしめていた。





あまりにも憎い恋心









ユニさまリクありがとうございました!!!
エルヴィン団長の夢あまりないですよね…そんな中拙サイトにお越しいただき天国とまで言っていただき本当に感謝です…
両片思いという表現が難しくまた最後は悲しくしたくなかったのですが尻切れトンボになってしまいましたね…
こんなものですが読んでいただけたら幸いです。リクありがとうございました!