ハンジ分隊長から受け取った書類を山ほど抱えて(いつまでたっても片付かない彼女の部屋からは過去の書類が何枚も発掘されるのだ。)私はため息をつきながら廊下を歩いていた。
エルヴィン団長の補佐になって1か月。前任の方は壁外調査で死んだわけでもなくただエルヴィン団長の補佐としてやっていけなくなり辞任したと聞き大変だとは覚悟していた。
けれども。

「ここまで大変とは思わなかったよ…」

今日は朝から雨が降ってる中走り回っていたせいで、黒いブーツの先の方が少しだけ泥で汚れている。いつもならこんな汚れ、リヴァイさんに見つかる前に泥なんて落としてしまえばいいのにそのために立ち止る時間さえもがないのだ。
はあ、とため息をつきつつ私は棟の一番奥にある団長室へとたどり着いた。両手で抱えていた書類をどうにかバランスを保ち片手にうつして空いた右手でドアを開けようとすると勝手にドアが開く。

「わっ、わわわわっ!!!」

どうにか保っていたバランスはいとも簡単に崩れてしまい、ちゃんと順番に積んでいた書類がばらばらになって落ちる。それだけでも泣きそうなのに目の前に立っているのは修羅のような顔をしたリヴァイさん。いつものことながら鋭い目に身が竦む。

「え、えっとごめんなさい…」

なんだか前が見えずらくなって自分が半泣きしていることに気付いた。涙こそこぼれはしなかったがうるうると目の前が霞む。
リヴァイさんは黙って舌打ちすると書類を拾うことが出来ず立ちつくす私の腕を引っ張った。えっ、と声にならない声が出て引っ張られるままに歩いていく。でも、あの書類エルヴィン団長に渡さなくては、と思うのだけれどリヴァイさんは足が早い。

リヴァイさんは資料室へと入っていって私の腕を勢いよく解放した。突き放されるように離された体は資料棚にぶつかった。じんじんと本の角が当たった部分が痛い。

「名前」
「…はい…?」


ぐいと顔が近づいてリヴァイさんの顔が近づく。お前はエルヴィンのものか、と小さく問われた。
「へ…リヴァイさん…」
「お前は誰のものだ。」

肩口のジャケットを掴みあげられてぎりぎりと持ち上げられる。痛い、痛い。
咄嗟に瞑った目を開けるとリヴァイさんは何か押し殺したような顔をしていた。
資料室に連れこまれたのと同じくらい急に離される。
それがなんだか物理的にも心理的にも離されてしまった気になって私の涙腺は緩んだ。
涙で歪む身長は人と比べるけど身長は小さいけれど背中は広い。

「待…って、リヴァイさ、」

伸ばした手は自由の翼にはもう少しだけ届かなかった。



伸ばした手





真白さまリクありがとうございました!!!!
きつくあたるとのことですがあのリヴァイが激昂する姿はあまり思い浮かばずなんだか暴力的になってしまいました…!すいませ…
体の心配までしていただいて恐縮です…働くかPCに向かうか食べるかしていないので元気です(笑)と、話がそれましたが本当にリクありがとうございました!!!!