水曜日の午後の呪文学の時間。実習ばかりでつまらない時間の間にふと今の時間机で勉強している彼女のことを思い出した。
『わたし水曜日の午後はなんも入ってないからすーっごい勉強するから!』
年齢不相応に子供らしい顔(日本人だから仕方ないか)が引き締まって机に向かう様子は面白い。
不思議と顔が緩むことに顔をしかめる。
「勉強するんじゃなかったのか」
授業を終えて帰ってくるとベッドに座りながらクッションを抱きしめる名前。
集中するためにだろう長い艶のある黒髪を後ろで留めた彼女の姿は新鮮だった。目の回りが赤いのも。
「もういや死んじゃう11ふくろうのわたしにN.E.W.Tなんて無理。」
指先で魔法薬学の教科書を弄る彼女。いつもなら赤い彼女の爪は小さい貝のような素のものだった。
「僕のために頑張るって言っただろう」
「ど、ドラコのためになんて言ってないもん!魔法省に入るためだもん!」
ベッドに腰掛けるとスプリングが跳ねた。体勢を崩す彼女を腕で支える。
「マルフォイ家に嫁ぐためだろ」
指先で教科書を弄っていた彼女は顔を真っ赤にして顔をあげた。
頭をぽんぽんと叩いてやるといつものように少し下向きになる彼女がなんとも可愛らしい。そう思い笑ってしまう自分になんだかべた惚れじゃないかと呆れてしまう。
「・・・がんばり、ます」
でもね、勉強だけいやなの。ドラコと一緒にもいたいの。
率直にそんなことを言う名前になんだか眩暈がした。
「夕食は。」
「アリスと食べたけど・・・?」
「そうじゃなくて」
僕が授業終わるの明日から待ってろ。そういうと彼女の顔に花が咲いた。
「わたし頑張るから!」
時はガリオンなり!そういって走っていく彼女を見送りながらくつくつと笑うと手に当たるのは上級魔法薬の教科書。
馬鹿だなあいつは置いていったのか。
女子寮に届けにいってやろう。階段が滑る?そんなのは知らない。僕はスリザリンだ。
永遠に君と。
受験生がんばれ!っていう自分から自分へのメッセージ。
いもりって七年生だから年下かと呆然としたけど。