私は中学生のとき色相判定で潜在犯と認識された。
きっと酒が入ると暴力に走る父をいつか殺してやると思っていたからだと思う。


「宜野座さん、これ昨日の報告書です。事件後のセラピーの進行は良好だそうで。」

タブレットから向きかえった彼に書類の束を差し出す。

「ではこれで失礼させていただきます」

縢くんにばいばいといって寮に向かう。なんだかんだ厚生省の公安局に執行官として勤めはじめ約5年。
華の高校生!とはいかないが18歳になった私はスーツではなく制服のスカートを翻してローファーをこつこつと鳴らした。


「狡噛さん?」


認識システムに手の平を翳して部屋に入ると私のだいすきなコーンスープの匂い。

「おかえり」

ゆっくりとお玉で黄色い液体を掻き混ぜる彼は私をみてコンロの火を消した。
ふらふらと近づくとぎゅうと抱きしめられる。



「あのね今日も宜野座さんが怖かったんだよー、あの人狡噛さんいないとすっごい不機嫌なの」

「名前が使えないからじゃないのか」

「失礼な!ゲームしてる縢くんの隣で頑張ったのに!」

私が頬を膨らませると狡噛さんはクク、と喉を鳴らして笑ってまた一口スープを掬った。



「狡噛さんのご飯おいしいから幸せなんだよねえ」

食後にベッドに転がって狡噛さんに抱き着く。世界一安心できる場所がそこにある。


「んっ・・・!」

突然狡噛さんが起き上がったかと思ったら唇が触れる。
ああ、切れ長な瞳が綺麗だなあとか睫毛長いなあとかかっこいいなあとか思いながら私は彼の首に腕を巻き付けて目を閉じた。












『宜野座さん今日は休ませてください』
『理由は』
『っと・・・腰痛?』
『公私混同はするなとそこの馬鹿に伝えろ』

なんだかんだ宜野座さんは私を休みにしてくれた。
とかいいつつ狡噛さんが出勤する羽目になったんだけど。



赤い首輪のモンスタア