「何やってるんですか名前」

部屋にはベッドが2つ。1つは未使用でベッドメイキングがなされぱりっとしている。皺一つない。
しかしもう一つはシーツも掛け布団もくしゃくしゃになっていて周りには二人分の脱ぎ散らかした衣服。高そうなスーツも黒い滑らかな素材のドレスもぐしゃぐしゃになっている。
情事後を感じさせるベッドの上にはシーツを引き上げて胸だけ隠し銃を向ける私と向けられた骸。
彼はもちろんの通り裸でなにも盾になるものはない。チェックメイト。

「どうして気付かなかったの?」
わたし、みるふぃおーれの、しかく、なの。

刺客だなんて死角だったでしょう?あなたにはわたしを愛す資格なんてないのよ、なんて愉快な。

「銃を下ろしてください」

話し合いましょう、なんて骸は冷静に言うけれど話し合いなんてもう遅い。あなただって気付いてるんでしょう?

「あなたを殺せば私は本物になれるのよ」

わたしもね、あの憎きミルフィオーレで改造された。六道を巡ったのは別に貴方だけではない。貴方がいなければ私はオリジナルになれる。

「あなたは僕を愛してなどいなかったのですね、」

ぽつり、と骸が言った。

「あなたと一緒にいられたらどれだけ幸せだろうって思っていたわ。」

それが無理なのは最初から分かっていたけれど。
エストラーネオとか、ボンゴレとか、ミルフィオーレとか、なければよかったのにね。
来世はまた出会えるかしら。半分本心に、そして餞のように笑うと彼は「僕はもうマフィアはごめんです」と自分を嘲笑うかのように悲しく笑った。

「キスしてください」「は、」「はやく」

どうせ逃げられないと気付いたのだろうか。ああ、いつまであなたは私を愛すの?
憎んでしまわれたかった。蔑まれてしまいたかった。殺してしまえてよかったと思いたかった。愚かなマフィアを見るような目で見てくれたらどれだけ。

「ん、」

そっと触れる唇はいつもと変わらなく温くてだけど少しだけ震えていた。

「ほんと、は…愛してる、の」

言ってはいけないのに。言ってしまえば胸に残ってしまうのに。
この引き金を引くことを躊躇してしまうのに。

「愛している女性は刺客でそれなのに愛してると言われて泣かれるなんて僕はなんて幸せなんでしょうね」

抱き合いながら、それでもまだ銃口を向けられているというのに穏やかに笑う骸に涙が零れた。

「自分の為すべきことを為しなさい名前。」

さようなら、前が見えないあなたの最期の顔なんて見れないほんとは好きなの愛してる。
もうなにも考えられなくなって私は引き金を強く握った。









銃口を向けるキミの眼には泣いている僕が映った。