本当、だった。東京チームの玄野くんから唐突にメールがきた。
「やっほー名前ちゃん元気??俺はまだ生きてるよ!いっぱい星人倒してようやく90点だぜてへぺろ」


………なんて来るはずがない。そのメールはもっともっと簡潔なものだった。
“西によると、明日世界が終るらしい”カタストロフィ――――そんなことをそういえば岡さんが言っていた気がする。
亡き友人、なんてこんな生活をしていたら珍しくもないのになんだか寂しくなってしまった。力があろうとなかろうと運がよければ100点とって解放されるかもしれないし運が悪ければ強くても死ぬかもしれない。奇遇なことにその玄野くんと知り合ったその日に仲間が大勢死んだ。そして付き合っていた桑原は100点をとって日常に帰ってしまった。
セックス依存症はガンツから解放されたときになくなっていたらいいんだけど。
だってそうしたら塾で小学生に発情しているかもしんないし。それはちょっと危なすぎる。

好きだった、あんなセックス依存症なのに私に対してはちゃんと愛があった。
なにもせずに抱きしめてくれる時だってあったし、優しくゆるゆると愛のある行為もあった。
でも、もう会えない。
ガンツから解放されたいまはガンツメンバーのだれも、私でさえも覚えていない。
この間塾の帰りに買い物に寄る桑原をみかけた。

「………和男ちゃん」

会いたいよ、ほんとは。あのパーマでくしゃくしゃの髪に指を通してぎゅってしたい。
けれどそんなの叶わない。もしかしたらあんな人だ、一夜の過ちで抱いてくれたりはするかもしれないけど。





玄野くんのメールは本当だった。まるで巨人のような宇宙人のようないままでのミッションでは見たことのないものだった。
ガンツスーツを着ているものの一人なんかではそんな戦力にはならない。
ばらばらになっていく女子高生、引き離される親子、半壊した建物。
地獄絵図のような光景に顔をしかめながらも私は桑原の学習塾まで走った。
もし今日が人類の最後の日だったとしたら。
私は偽善のためだけに生きてなんていけない。臭いかもしれないけど私は最後まで愛のために、という自分のために戦いたい。そして死ぬんだろうね。

「……か、ずおちゃっ………」

半壊した学習塾。机をバリケードのように見立てて何人もの子供の生徒たちとともに隠れていた。薄い色素のパーマのかかった髪は汗で張り付いている。
でも、生きてた。

「和男ちゃん!!!!!!!」

だれ、とそんな顔をする彼だが私は構わなかった。
彼の腕を掴んで走る。
彼は少し抵抗したように見えたがガンツスーツで力が増幅された私に腕を引っ張られたらそのまま走り出した。

「私は名前名字。あなたを守りたいの、大げさに言って前世の仲間とでも思ってくれていいから」

走りながら小さめの星人をガンツソードでいなした。
守るから。守るからあなたを。絶対に死なせなんてしないから。

「和男ちゃん好きなの」
「あんなあ!!!」

和男ちゃんが私の腕を振り払うようにする。もちろん腕が振り払うことなんてできるはずはないんだけど。

「こんなの見て、思い出さんわけないやろ」
「へ」


和男ちゃんが髪をくしゃくしゃとさせた。

「名前、俺のスーツはどこや」
「あるわ、け…ないでしょっ…解、放されたっっんだか、らっっ…」


涙が溢れた。人類はこれで滅亡なの?
嫌だ嫌だ嫌だ。
ようやく会えたんだ。もう離したくない。

「これ生き延びたら岡スーツゲットできちゃうかもね」
「ははっ…そうかもしれんわな」




崩れてゆく闇を切り取る











はじめてのGANTZさん。
奥先生13年間の連載お疲れ様でした。
やっぱり一番好きなのは和男ちゃん。