凝り固まった肩をまわして端末をパネルに押し付けて認証をしてドアノブをまわした。
「あ、伸元!」
おかえりなさい!と子犬が尻尾を振っている姿を彷彿させるような笑みを浮かべて抱き着いてくるのは名字名前。
こいつは子犬ではなく警察犬のはずなんだが、と頭を抱えながら腰に巻き付いた腕をはがすと彼女は頬をふくらませた。
「私いまから仕事なんだしちょっとくらい甘やかしてよー」
その言葉をスルーするように鞄を床に置くと目に入るのは彼女の少し開きすぎな胸元。
お前は警察犬なんだからちょっとくらいちゃんとした格好をしろ、そう言って彼女のワイシャツのボタンを閉めようとすると手を軽くはたかれて拒否された。
「へっへーキスマークでも付けられない限り閉めないもーん」
にやりと悪戯っ子のように笑う彼女を見ていると加虐心をくすぐられた。
シャツのの襟元を掴んで引き寄せその白い首筋に唇を寄せた。
「・・・いっ・・・」
彼女は目をきつく閉じてそのゆるく甘い痛みに耐えるように微かな声をもらしてぴくりと動いた
「ほら6時になる、名字執行官は今日は宿直だろうはやくいけ」
仕事時と同じ声色で言うとむーと膨れた顔をしてワイシャツをしめた彼女は
「のぶち・・・宜野座さん明日非番ですよね」
軽く顎をひいて頷く。彼女は花が開いたかのように明るく笑って
「私も非番なんで、映画見ません?」
おもしろいんです、チャップリンの無声映画最近のマイブームで。
「はやく帰ってくることだな」
はーいいってきまーす!元気に返事をして跳ねるように出ていった。
いつもながら気の抜けるその様子に軽く笑っていつものように扉がオートでがちゃりと閉まった。
結論早くいうとその日彼女は帰ってこなかった。
緊急出動が深夜に出て狡噛とともに先発した彼女は犯人がいたと思われる場所の近くで倒れていたという。
俺がついたときには彼女はすでに息がなくいつもはうざったいまでに巻き付けてる腕が俺に触れることはなかった。
同じ日に狡噛は佐々山を失った。有力な執行官を二人もなくした一係は忙しく、感傷的になる暇さえもなかった。
が、狡噛は違ったらしい。彼の色相は日を追うごとに混濁していった。
「なにが違ったんだろうな、」
机のうえにひっそりと置いたのは彼女が家を出る前にテレビの上に置いたらしいチャップリンの街の灯。
どうせなら彼女と同じように死んでいきたかった。
最後のほうが消化不良。ギノさん口調わからん。
とりあえずこれがギノさんが執行官を猟犬と呼ぶきっかけ・・・?みたいな、みたいな←