私は本当に面倒臭い体質を持っている。
いらいらした時―例えば仕事がうまくいかなかったり、彼氏に振られたり、美味しいものを台なしにしてしまったり―そんなとき私のPSYCHO-PASSは急激に跳ね上がる。
それはもう隔離収容所だかに入れられてしまうほどに。

だが次の日には私のPSYCHO-PASSは昨日の面影なんかなかったように通常値に戻るのだ。
私の友人はいらいらした時ストレスケアにお金を注ぎ込んでいる。
そうはいっても彼女の上がり幅は私ほど大きくなかったが。





やってしまった。一年間の付き合いだった彼氏にホテルのレストランに呼び出された。プロポーズでもされるかと思ったが違う。まさかのまさか振られたのだ。
いらいらむしゃくしゃして裏道のごみ箱をおしゃれのために履いてったエナメルのピンクのハイヒールで蹴り倒すと目の前の街頭ドローンがけたたましく鳴った。





「何故だ」「さあ体質なんで」
公安局に連れて来られて一日半。寒いベッドで寝かされて取り調べ室みたいなところに連れていかれる。
無機質な部屋に扉には逃げ出さないようにかドローンが置かれている。
いやあ私そんな重要犯じゃないっすよカツ丼はまだっすか。てか帰りたいっす。



もちろん私の犯罪係数が下がった以上公安は私を拘束する権利はない。今は廃れたが昔でいる任意同行ってやつだ。
先ほど取り調べをされたギノザ?という男がもう一度来て私を解放すると言い放った。

ほぼ二日ぶりの空。レストランにいったままの格好の私はドレスのままだ。いけない、着替えよう。
そう思いバックからコンパクトを取り出した私は壁に寄り掛かっている男を見つけた。


「・・・槙島。」「災難だったね名前。」

彼は紙袋を私に手渡した。中には私の私服であるゆったりとしたワンピースに薄手のカーデガン。
そうだこいつはもう何年も前、高校にいた頃から本物志向だった。もっともそれが不思議なわけではないけれど。


「なんであんたは別れたらすぐに会いにくるわけ?」「今がアピール時かと思ったんだが・・・違ったかな?」

私はため息を吐いた。槙島聖護はこういう男だ。
私は恋愛話など彼にしたことはないのにこいつはいつの間にか知っている。
友人じゃなければストーカーで訴えている。


「あんたと私は違うよ、もし変な親近感とかならやめて。」

こいつの色相はいつもクリアカラーだ。少しでもいらついたら大きく変動する私とか似ても似つかない。

「君と僕は違う。」

頬に触れた冷たい唇になんだかどきんとする。
彼は私をいらつかせたことがない。もしかしたら平穏に一緒にいれるかもしれない。

そう思い私は紙袋を受け取った。まずは本物志向からあわせてみようか。






あの怪物の号令を聞け。










たぶん彼女は槙島といる限り免罪体質者なんじゃないかな。
でも友情と愛は違うからやっぱり乱されるのかしら。