総合分析室No.2。
一見暗く人気のない部屋だが意外な人が意外なときにやってくる。
「志恩さぁぁーん。」
まるでわんこのように擦り寄ってきたのは一係の監視官、名字名前。
小柄で色素が薄いのであろう栗色のウェービーロングとくりくりとした目をもつ唐之杜のお気に入りである。
「なにー?また宜野座監視官?」
そんな彼女はなんと残念なことか宜野座伸元監視官の恋人である。お互いに公安局の出世頭であるが眉間の皺が絶えない彼とふわふわとしながらも仕事のできる彼女。
なんと世の中は不公平なのだろう。
「志恩さん。志恩さんみたいなダイナマイトボディになるにはどうしたらいいんですか!」
彼女は唐之杜の胸をちらりと見た後自分の胸元に視線を下ろした。
確かに彼女の胸はダイナマイトボディとはいえない。しかし小柄な方にしては並々たる胸である。
「なぁにー?宜野座監視官にちっちゃいだのいわれたのー?」
紫煙を吐き出しにやにやとする唐之杜に向かってむくれた顔をする名前。
「伸元はそんなこと言いません!ただちょっと胸とかあったりしたら誘惑とか・・・」
恥ずかしそうにもじもじとする名前に唐之杜はにやりとした。
ダークスーツの上から赤いマニキュアの手がするりと撫でる。
「名前ちゃんは誘惑なんて必要ないと思うけど?」
「しっ志恩さっ・・・」
顔を真っ赤にする名前はまるで熟れた林檎のよう。
唐之杜は手を離してキーボードに向かった。
「まぁ宜野座監視官に揉まれすぎておっきくなったら来なさい」
私のお下がりあげるわ全くすぐサイズ変わるからやんなっちゃう。
そんな唐之杜を背中に名前は顔を真っ赤にして「失礼しました!」と言い逃げるように去っていった。
日々色相が濁っていく幼い息子を監禁したうえに殺した母親の事件。
世界で一番愛しあうはずの肉親を殺すという事件はどんなに世界が変化したとしても変わることはない。
「全く、やんなっちゃうわねぇ」
カタカタとキーボードに指を滑らせ報告書をまとめあげていく。
その時背後の扉が開き黒髪に眼鏡をかけたダークスーツの男が入ってきた。
「あらぁ宜野座監視官」
何か頼まれてたっけ?そう問うと彼は眉間に深く皺を刻んだ。
「何故女は胸など気にする」
真面目な彼からそんな言葉が出てくることは意外以外のなにものでもなく唐之杜は吹き出した。
「なにがおかしい」
「いや、名前ちゃんも同じ案件で来たわよ」
勧めてもいないが宜野座はソファーに座りその長い足をゆったりと組んだ。
「なにかあったわけ?」
「いや、」
考えるそぶりを見せながらもそう即答する宜野座に唐之杜はこれだから男ってねぇとため息をついた。
「名前ちゃんが悩んでるんだったら聞いてみればいいんじゃないの?」
心理分析は仕事としてあるが同僚のこととなるとやりにくい。そしてこの二人はなんだかんだお互いを好きすぎるのだ。
「そうか、」
そっけなく、まるでいつもの仕事のように答え廊下へ出ていく宜野座。
しかし唐之杜は見た。
廊下を滑るように動く清掃ドローンに宜野座が躓くのを。
背中をそっと押す
(なんだかんだかわいいわよねえあの二人)(俺には恋に悩んだり理解できないっすけどねえ)
最後になんで秀星を出したかって?私の趣味だよ秀星いなくてさみしいよ泣きそうよ