この幸せが当たり前なことが誇れる幸せがあった。シリウスに太るぞと言われながらもついつい食べてしまう夕食のヨークシャープディングだったり、シリウスに後ろから抱き締めながら見るクィディッチの試合だったり、手伝ってもらいながら必死で終わらす魔法史の宿題だったり。

12月の中旬、マグゴナガル先生が用意したクリスマスに寮に残る生徒のリストにまっさきにシリウスと私は名前を書いた。
「兄さん、今年も帰ってこないの?」きっと弟なのであろう。スリザリンの緑色をしたネクタイをきちんと締めた男の子が話しかけてきた。
「あんなとこ、もう帰んねぇよ。」
シリウスが嫌と不仲だとは聞いていたが平然と言ってのけるシリウスを見てなんだか胸がずきりとした。
彼とは正反対のタイプの弟くん(後から聞いたのだがレギュラスというらしい)はうつむいてそう、と言って立ち去った。
その日の夜「母さんがどうしても兄さんに会いたいと言ってるので協力してくれませんか?RAB」と書かれた羊皮紙を黒くて毛並みの良い梟が持ってきた。
指定された空き教室私の足は急いだ。


「レギュラス、くん?」「来てくれたんですか、」
シリウスに似ているのに違うその顔がうっすらと笑うことに私は違和感を感じた。
「でも私に出来ることなんてないと思うけど。」
私は一番前の机に腰かけて脚を揺らした。ふと顔を上げると目の前にある整った顔。
「ちょっ、何してっ…」
身を引いた瞬間に触れたのは冷たい唇。焦がれ縋るようなキスに身を固くした。
「先輩、兄さんを救えるなら、僕も救ってくださいよ」
二番目でもなんだっていいんです、そんな自慰的な呟きを聞いてしまった私はもう身を引くことなんてできなくなっていた。

黒の深さを知る

「どこへ行ってたんだ?」と笑う彼に何もなかったかのように返す私は果たしてどうなってしまうのだろうか。