めんどくさいなあ、なんて言ってもしょうがないのにため息が出た。
シェルピンクのすらりとしたドレスにピンヒール。慣れない格好すぎて落ち着かない。
私が綱吉の姉なんかじゃなければ、いやボンゴレに首突っ込まなければよかったのか。

「大丈夫っすよ名前さん」
わさわさとドレスの裾を触る私に後部席から声をかけてきたのは獄寺。

「あー、うん。」

そんなこと言われても全く落ち着かない。ゆっくりと停止して左側のドアが開いた。

綱吉の腕につかまって車を出るとここにいるのが皆マフィアだなんて思いもしないようなきらびやかな世界。
綱吉は挨拶を交わしにいって私は立食形式のテーブルに向かった。
まるで宝石のように飾られた綺麗なケーキ。まずどれから食べよう。粉砂糖がたっぷりかかったガトーショコラ。きらきら光る果物がのっかったタルト。

マフィアのパーティーなんて怖くて仕方ないけどご飯だけはおいしい。ドレスが見苦しくならないように、でもいっぱい食べよう。
そう決めた私の肩が後ろからぽんぽんと叩かれた。

「え、と・・・どなたですか?」
白い髪にアメジストのような目。灰色のスーツをゆったりと着こなしたマフィアとは思えないようなモデルのような男性。

「名前ちゃん、やっと会えたね」
旧友に会うかのように目を細めて笑う彼だが私には全く覚えがない。

「つなよ・・・ボスのお知り合いですか?」

「まあ、そんなもんかな。僕はミルフィオーレの白蘭」

たまげた。あの有名なドン・ミルフィオーレとは。
綱吉が同盟を結ぶかどうかで揉めていたファミリーだ。

名前ちゃん、きて、と腕を掴まれる。
半ば引きずられるようにしてついたのは会場のすぐ近くの小部屋だった。

「え、と白蘭さん・・・?」
「ねぇ、思い出さない?」
「へ、」

間抜けな声を出した瞬間にまた引っ張られて私は近くのベッドへとダイブした。
「君はもう僕に会ってるよ。パラレルワールドでね。」

パラレルワールド?意味がわからなくて言葉が出ない。その瞬間唇にキスを落とされた。一瞬のそれではなく舌も意識も搦め捕られるような深いもの。押し返そうとした手は束ねられ、非戦闘員の私には手も足も出ない。

「ふぁ、んんっ・・・」

無理矢理された、とか知らない人だとか、そんなことは吹き飛ぶくらい気持ちがよい。なんだか背中がぞくぞくして私は意識を手放した。





意識を失った彼女の髪を梳くようにそっと撫でた。可愛い。なんでこんなに可愛いんだろう。今度こそ君を死なせない。君が幸せになる未来を作るから。名前ちゃん愛してるんだ。名前ちゃん。

彼女を抱いて会場を出て脇に寄せられた車に乗り込む。


「びゃっ白蘭さん!拉致はまずいですよ!」

お腹を抱え込む正チャン。
僕は彼女をそっと車に寝かせて乗り込んだ。

「ボンゴレに連絡してくれる?名前ちゃんをくれるなら僕はなんだって協力するし名前ちゃんは僕のものだって。」

お腹を本格的に痛めたような彼を横目に僕はふふ、と笑った。



僕は何度も君とこの世界を愛すんだよ




夢を見た。愛した人を守って死ぬ夢だった。馬鹿だよね、あなたが避けられないはずないのにね。そう言ったら歪んだ瞳が懐かしくて愛おしかった。
でもまた会える気がした。私だけを置いていかないってあなたが言ったからそうだねって私も笑った。










なんだか白蘭ってこんな話ばっかり書いてしまう。すきなんだけど、ね。