「ハウンド5対象発見。イーストビルの西側屋上です。人数が多いので応援願います」

言うのが早いか宜野座さんが到着する。ビルの屋上では頭がおかしくなってしまったようにナイフを振り回す男が4人。狡噛さんも弥生ちゃんも縢も来る様子がない。
こっそりとドミネーターで色相チェックするとどの男も濁りきっている。4人も血みどろなんて嫌だなあと思いながらいっちゃいますか?と宜野座さんに合図をおくると彼は立ち上がってドミネーターを向けた。その瞬間ふと振り向いた私が見たのはギラリと光る銀色。
反射で飛び込んだ私の腕に鋭い痛み。左手で持ち直したドミネーターは「犯罪係数オーバー210執行対象です。セーフティーを解除します。執行モード、リーサル・エリミネーター。慎重に照準を合わせ対象を排除してください」と聞き慣れたアナウンスが流れぐちゃぐちゃ。
宜野座さんは大丈夫だろうか、そう思ってあたりを見るとどこから来たのだろう、皆がいた。

「やっほー名前ちゃん生きてるー?」
妙にふざけた笑顔の縢にいら、としながら背中を預けた。
「秀星くーん志恩のとこ連れてって、腕痛い」
縢は面倒くさそうにしながらも私を護送車まで運んでくれた。優しい。




「あらー随分派手にやったわねー何があったの?」
手際よくガーゼを取り出し消毒液をかける志恩。いった、と顔をしかめる。
「伸ちゃ・・・宜野座さんが後ろからやられそうになったから、つい。」
幼なじみだった頃の癖で伸ちゃんと呼んでしまう。あの頃は彼と同じ仕事がしたいと憧れから公安局を目指していた。でも今ここにいるのは監視官としての彼と執行官としての私。なんて世界はいじわるなのだろう。
「しっかしあんたも健気よねー、伸元ちゃんに怪我させたあと看病でもした方がよっぽどアピールになるんじゃない?」
志恩がくるくると包帯を巻いたあとにそれ、と叩くから私は痛くて飛び上がった。
「そんなことできない。宜野座さんはきっとこの世から潜在犯をなくす偉大な人だもん」
私は立ち上がって志恩に手当ての礼をいって分析室を出た。





「名字、」「宜野座さんお疲れ様です」
いつものように本心を悟られないようへらりと笑って返す。
彼がふと目線を下におとして私の腕を見る。
「あなたは猟犬の怪我なんて気にしなくていいです。」
だから、美しい世界を見せて、はやく。
失礼します、とぺこりとして彼の前を大股で通りすぎた。
ポロポロボロボロとおちていく私の表面にどろりとした気持ちに彼が気付いてしまう前に。



「まー頑張って落としたら?自分の作りたい世界に愛した人がいない堅物な監視官とかおもしろいんじゃない?」

人事だと思って紫煙を燻らせながら口が三日月をつくる様子が何度も思い出されて私は右手の人差し指と中指で軽く眉間をつかんでもんだ。













きっと交わらない二人。最近の宜野座さんはかわいいです。