*とてつもなく短い






きっといつか、私の事を殺してね。

確実に、はやく、私を、殺してね。

名前はいつも、思い出したように突然こう言う。
今日も仕事をひと段落終え寝室に戻った私に本から顔をあげるとにこり、と微笑んでそう言った。
「名前、」
ベッドに潜り込むと彼女は栞を挟んで本を閉じサイドテーブルに置いた。
後ろから抱きかかえるようにすると名前はおかしそうに笑いながら身をひねらせそっと触れるだけのキスをした。

「殺してね、」

耳元で囁く彼女の首元を引き寄せて抱きしめるといい匂いがした。
調査兵団の団長として多くの命を切り捨ててきた。しかし彼女がそういうのは私を慰めるためではないことを、なんとなく感じていた。

「名前、私のそばにいてくれ、」

きっといつか私は君を切り捨ててしまうから。切り捨てると約束するから。





明日はもう誰もいない