ピンポーン、と今日、指紋認証システムのせいでなかなか聞かれなくなった無機質な音が鳴って。また最新式の横にスライドするように自動で開くドアとは違くてギィ、と軋みながら開く扉。

「秀星入れて〜なんか食べさせて」
「まーた来たのかよ」

いーじゃん非番でしょー。やることないんでしょー。暇してんの、監視官様には分かっているんだからね。そういいながら私はミュールを脱いで部屋にずかずかと入った。
ギノさんに怒られても知らねーからな。そう言いながらも迎え入れるあんただって同罪なのにね。
彼に似合ったごちゃごちゃとした明るい部屋。真ん中のソファーにごろりと転がって鞄を放り投げる。鞄が跳ねて化粧ポーチがごとり、と落ちた。腕を伸ばしたが届かない。いーや後で拾えば。私は腕から力を抜いた。

「ほーら、急だったから適当よ」
「んー!秀星のパスタだーいすきー縢くんも愛してるっー」

酔ってるだろ、と呆れた声を出す彼に素面だもーん、と返す。今日も人を肉の塊にしたくせに私はとても気分がよかった。クソ野郎だね。
秀星の作ってくれたミートソースのパスタを食べると私はふふふ、と笑った。




秀星がいつの間にかだしてきたワインを煽って火照った体を冷まそうと脱ぎ捨てたストッキング。
「ね、きて、」
「なによ?人肌恋しいワケ?」

茶化す秀星は私に寄り添ってそっと背中に腕を回す。少し小さめの体。
抱かれるなら狡噛のガッチリした大きな体がいいよねーなんて今朝も志恩と話していたばっかりなのに私が安心するのはこの匂い、この体なんだ。
私を抱きしめたままぼうってしている彼の唇に私はそっと吸い付いた。

「んっ……あのさ、俺は嬉しいんだけど、いーわけ?あんたは俺とこーゆーことして。」

なにかを誤魔化すようにオレンジ色の髪の毛をぽりぽりと掻く秀星の首に私は腕を絡ませて「嫌じゃないんなら、もっとシて」と耳元で呟いた。
犯罪係数あがってもしらないんだからな、そういう秀星に私はそっと頷いて鎖骨にキスを落とした。

寂しい人間だと最初に出会った時に思った。その寂しさをおちゃらけた態度で誤魔化すようにして生きている彼を慈しむようになった。

「っ、あ、やだ…しゅー、せっ……すき、っ…かも…ぉっ…」
「かもかよ。」

俺は好きよ?名前チャンのこと。そう言う秀星に私はそっと目を瞑った。
涙がそっと零れ落ちた。






溺れるなら海の底まで











台詞一部嫁コレより。