※短い
静かな部屋にカチャン、と鍵の開く音が響く。
「えるびんさーん、ただいま〜」
高校の友人と有名なテーマパークへと出かけていた彼女はリビングへ現れた彼女はコートを掛けて私のほうを振り返った。可愛らしい季節の絵が描かれたビニールバッグからは特有の黒い耳と赤いリボンが覗いている。これをつけた彼女はとても可愛らしかったのだろう。
あーお腹減った。そういう彼女に白米の残りで握っておいたおにぎりを差し出した。
「ありがとう!」
名前はにこりと笑ってビニールバッグからお土産を次々と並べる。クリスマスの服を着たキャラクターのぬいぐるみ、缶に入ったチョコレートやクッキー。そしてゴールドとシルバーのペアのストラップ。
「これ、携帯か鍵に一緒につけたいなって思って」
「いいな、名前はどこにつけたい」
「えっ、どこでもいい…」
「こら、素直に言うんだ」
携帯、と呟いた彼女は恥ずかしそうな素振りを見せた。それには気付かないふりをして包装を開けてから机の上に置いてある彼女の携帯にストラップをつける。
温かいお茶も入れて渡すと彼女は地図を広げてここに言っただのここのご飯が美味しかっただのと話している。もう目がとろんとしていてソファにぐだりと寝転がる彼女。
全く、今日朝から早かったのだろうし寝かせなければ。
「…うーん、今日楽しかったの〜」
目を閉じて言う彼女に近づく。手をついたソファがギシリ、と鳴ったが名前はううん、と唸っただけだった。
「名前今度は私も連れて行ってほしいものだな」
唇の上でそっと呟くと彼女はゆるゆると目を開ける。じゃ、バレンタイン、一緒に行こう…?寝ぼけたような声で言う彼女にそっと口づけるとふにゃりと満足げな笑みを浮かべる。
まったくどうしてこんなに無防備なんだか。
担ぎ上げてベッドまで運んで名前に掛布団を掛けてもう一仕事してから寝ようとリビングに戻ろうとするとなにかがズボンを引っ張った。
目に入るのは細く白い指。
もう意識は完全に手放しているだろうに離そうとしないその手に観念して私は彼女と同じベッドの中へ潜った。
ばいばいネバーランド