この間内地に行ったときに買い込んだ本を読んで欠伸をする。だいぶ集中して読んでたな。
明るかったはずの外はもう真っ暗で金色の月が覗いている。
何もしないまま貴重な休みが終わってしまうのか。あーあ。まあ他のことなんてすることないんだけど。

水でも取りに行こうかな。そう思い私は立ち上がり階段を下りた。夜になると少し寒くて私は腕をさすった。珍しく食堂には灯がともっている。誰がいるのだろう。見知らぬ兵の逢引とかだったら気まずいな…と思いながら戸を開けるとそこには頬杖をつきながら瓶の赤い液体をグラスに注ぐエルヴィン。

「ああ、なんだ名前か。」

少しほっとしたような彼にん、と軽く顎を引くと少し気の抜けた笑みで「新兵にこんな情けない姿見せるわけにはいかないからな」と言う。そんなこと気にしてたの。私は今日の料理当番がピカピカに磨いたグラスを取ってエルヴィンが脇に置いた瓶を失敬して注ぐ。
芳しい匂い。高いお酒そうだなあ。
美味しい。そういうとエルヴィンは団長様様のものを失敬したことは何も咎めずもう一杯、と注いでくれた。

「あんまり妙齢の女性が夜中に出歩くのは感心しないよ」

「妙齢って…もうとっくに過ぎてるよ」

ぷ、彼の言ったことが酒が入っているからかより可笑しくなって吹き出すと笑うんじゃない、とたしなめられる。ああ、もうそれにこんな薄着で。肩に触れられると心臓が大きく脈打った。やだな飲みすぎたかな。そう思うとふわり、と背中を覆うのは安心するような匂いがするもの。

「わ、ありが……ん、んぅ」

ぬめり、としたものが触れて絡められてなぞられる。ぞくぞくとする背中をさすられて唇の上で「君を抱きたい」と呟かれた。

「あの…っでもちょっと食堂じゃ…ひゃっ!!!!」

勢いよく抱き上げられる。浮くことなんか立体機動で慣れっこのはずなのになんだか怖くてエルヴィンのがっしりとした首にしがみついた。いつもよりも低音な声でいい子だ、と呟かれ心なしか緩んだ口元を悔しくなり引き締める。

どこを見たらいいのか分からなくなり目を瞑りながら首にしがみついていた私の背中にふわりと柔らかいものが触れ離される。

「…ここっ…どこ、っ?」
「空き部屋だよ」

場所の心配はもうやめなさい、そういわれ再び吸い付いてきた唇。啄むようにして離れたそれに乞うように見上げた自分に顔が熱くなる。再び触れてきたそれには舌が入ってきて私の行き場のなくなった手は絡められた。ぷちん、ぷちん、とボタンを外す音は聞こえるが溺れるような熱い波に私は逆らえない。

「…ぁっ…」

ちゅ、と胸の頂に落とされたキスに声が漏れた。慌てて口を抑えるが弄るように彼の赤い舌が這って声が抑えられなくなっていく。

「ゃあっ…も、いいからぁっ…」

びくびくと腰は動いてそのことに恥ずかしくなる。触れられることに快楽を感じ始めたそれは下着をしっとり濡らしているのが分かって太い骨ばった指でなぞられるのがひどく恥ずかしかった。

「…気持ちいいか?」

「んっ…ひ、ぁっ…きもち、い、っ…」

素直だな、ぽんぽんと頭をなでられるのがほっとして気持ちよくて私は目を閉じた。
その瞬間に熱いものが触れ入ってくる。閉じた目に涙が溜まると指先で拭われる。
目を開けるとその指先を舐める彼が扇情的で私は思わず絡まっている指先に力を込めた。

「…ひ、ゃ、だめ、そ、れぇっ…」

ゆっくりと浅かったり深かったり動かれると訳が分からなくてまた涙が出てくる。
こんな気持ちいいのははじめてで、うっすら目を開けると微笑んでこっちを見ている彼と目が合ってとても恥ずかしくなる。顔、見られて、る。

「やめてっ…そ、れだめっ…やだ、ぁっ…ふぁ…っ」

ゆっくり浸食するようなそれはだんだんと激しくなって気持ちの良いところを突く。
逝く、というより全て剥ぎ取られて奪われるような感覚。
口元を抑えた手は意味なくて無意識な声が出た。前髪をかきあげられて額にキスされる感覚を感じながら私は意識を手放した。











「ん、」

目を覚ますと頭の下に温かくてでも枕ではない感触。なんだかいつもと違くてすーすーする。飛び起きてその違和感がいつもの寝間着ではなく裸で布団に包まっているからだということに気付いた。

「まだ起床まである。もうちょっと寝なさい。」

布団をかけなおしてくれるエルヴィンの横にもう一度もぐり直し私は呟いた。

「…体、痛い。仕事できない。」

まったく。呆れたように笑うエルヴィンが「今日は俺の書類整理に手伝ってもらうか」と言うのに賛成するように私は彼にもう一度擦り寄り、あと数時間の睡眠を貪るため目を閉じた。








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