仲間がどんどん死んでいく調査兵団の中で生き残っている同期とはやはりより仲を深めるものだ。私も訓練兵のときよりも仲が深まった気がする。まあ、訓練兵時代や新兵時代仲が良かった友人はもういない、というのもあるんだけれども。
「もう、馬鹿なんじゃないの、クラウス」
「ははっ、そうだな君よりは遥かに馬鹿だ」
「誤魔化さない。じゃあね、おやすみ」
「ああ、よく寝ろよ」
手を振って別れると廊下の曲がり角でエルヴィンとぶつかった。訓練で汗でじんわりと濡れた髪がうざったい。私と彼はいつからか言葉になく交際をしていて夜呼ばれ体を重ねることもしばしばあった。
けれどこんな訓練帰りに腕を掴まれ部屋に誘われることはなかった。抵抗することもできず一番近い部屋に押し込められる。足がつんのめってベッドへとダイブしその私の腕をねじ上げられる。彼は冷たい瞳をしていた。




「あっ、はぁ…ぁっ…んぁ…んっ…」

ベッドに押し倒され服をはぎ取られるように剥かれめりめりと内壁を割り入ってくるエルヴィン。体は正直で彼のものが挿れられると熱くなるし滑りがよくなる、けれどもいつも寒くはないか、ちゃんと気持ちよいか。そう確認し行為を先へ進める彼はおらず結合部と腰に触れる手だけは熱い。ただそれだけだった。触れられない部分が寒くて、そしてとても寂しくていっそりと涙が一筋こぼれた。腰を叩き付けるかのように動かす彼はきっと気付かないだろうけど。

「…ひぁっ、んっ…えるび、えるびんっ…ぎゅ、てした、いっ…」

さびしい、そう訴える声は出なかったが彼の深い瞳と目が合って私の言わんとしたことを理解したようだった。しかしその目は冷たくていつものように目を細めて私を見てくれはしない。

「別に拒みはしないよ」

応えもしないけれどね、そういって迫る唇はぬめり、と私の唇を喰んで舌はまるでそれが意志を持っているかのように口内を這う。舌のざらざらとした感触がなんとも恥ずかしくなる。先ほどの呟きを忘れさせるかのように激しくなった接吻とともにゆるくかき回されていたものも激しく律動をはじめる。その動作にあわせて揺れる体とともにはしたない声が漏れる。首に回していた右手をはずして口元をおさえるとその手は掬いとられるようにエルヴィンに握られた。もっとも手の握り方でさえも甘いものではなく手首を掴まれているだけ。ふわふわとした快楽とともに私はなんだか冷たいものがとろり、と頭のてっぺんから落ちてくるのを感じた。

「っ、ひ、エルヴ、っィン…んやっ…イ、ちゃ、っ…ぁああっん…っ」
「っ…名前…っ」

膣口よりも少し下がひりひりと熱くなるようにうずきふわりと腰が浮く一度では止まらないその感覚はぎりぎりと中のものを締めあげた。
びくり、びくり、と反応するそれにまだ膣は反応していてぶるり、と寒気がするように体が震えた。はあ、はあ、と浅く吐き出す息と突然に抜かれるそれにまた私は背中を震わせた。



普段情事のあとは優しく腕の上へ誘導し寝かせてくれるのに今日は彼はベッドの右横
に座り私を見ないようにして窓の方をぼんやりと見つめていた。

「…嫌いになっただろう」「へ、」

エルヴィンはまだ窓の方を見据えたまま言った。彼の手は敬礼の時のようにきつく握られていた。

「…これで君を愛しているなんてふざけてるね」

そう言われたが途端に胸が熱くなって私は掛布団から出て彼の背中を抱きしめていた。
いつもは掛布団を深く被り絶対に行為が終わってからの裸体を見せないようにしているというのに。シーツの中の彼の体温も心地よいけれど掛布団から出て抱き合うとまるで世界に私と彼しかいないような気がした。この体温に支えられていたいと思った。
なにも言えずに後ろから抱き付く私に彼はくるりと向き合ってそっと首筋に頭を落とした。





声帯以外で語る愛