彼はふらりとこの部屋にやってきて、私を抱く。
それは団長になってから特定の女性を作ったりすることのない彼の単なる欲望の処理。
それでも女は簡単だ。
誰にも触れられたことのない私は、決して知ってはいけなかった感情を抱いてしまう。
彼が私に触れる度、私は確かに女としての喜びを感じているのだ。


コンコン、と控えめにノックされたドアを開けるとジャケットを脱いでラフな格好をしたエルヴィン。私が身を引き彼を招き入れると唐突にベッドに押し倒され唇が触れてどんどん私の中へ侵食してくる。唇を割られ舌を吸われ欲望に満ちた彼の舌がどんどん私を責めたてる。それと同時に寝巻きはまくられ、外気に素肌が晒された。胸の頂きにちゅ、と軽くキスが落とされ私は口を手で覆った。
声とともに気持ちまでポロリと落としてしまいそうだった。

「気持ちいいか名前」
その吐息があたるだけで腰がぞくぞくとして熱い息が漏れる。
「き、もちよくないっ…」
強がりでいった言葉をエルヴィンは笑った。
「嘘つきは嫌いだな」
顔をそらされ唇が耳に触れた。
「ひゃぅ…」
突然の刺激に驚いて声を上げてしまう。
「君の声をもっと聞かせてくれ名前」
君の声が聞きたい、そういわれたことで体が熱くなる。耳を責められるのと同時に体の線をなぞられるともう我慢が出来なくなってしまう。生理的に出た涙をエルヴィンがそっと指ですくった。
「私に抱かれるのは嫌か」「へ……?」「私は、君が好きだ」
悪かったね、そう言って部屋を出て行こうとするエルヴィンを私はあわてて抱きしめ引き留めた。いつも抱かれるだけで私から抱きしめることのなかったその体は大きくてがっしりとしている。
「私、だんちょ、が好きです」一瞬彼はくしゃり、と泣きそうな顔をした。まるで大きな子供みたいだと思った。
「もう一度聞かせてくれ、名前」「す、好きです、だんちょ…んっ」
熱くなった頬に柔らかいまるでいつくしむかのようなキスが落とされ私はまた涙を流した。





私の要る理由を教えて