「エルヴィンが私を調査兵団に誘ったのは兵士としてじゃないと思ってた」
もうすっかり陽の落ちた夜更け。団長として大きさに与えられた執務室には太いろうそくがぼんやりとあたりを照らしている。
ソファで足を組んだ名前がぽつりと呟いた。
「どういうことだい?」
エルヴィンは資金援助の手紙をすらすらと綺麗な字で書いていく。
が、名前にはそれが何の記号であるか分からない。
「女を買う以外で地下街から女を連れていくやつなんていないわ」
慰安婦ってやつかと思ってね。他の団ではそういうことが起こることもあると聞く。
もちろん厳しく処罰されるが。名前は皆優しくしてくれるの、嘘みたい、と呟いた。
茶化したような言い方だったがミルクティブラウンの髪は寂しげに揺れた。
「地下街ではそんなの当たり前だったから、なんだか気持ち悪いのよ」
だって私ほら美人だし。胸をそらして自信げにいう彼女。たしかにそのそらされた胸は形が整っていて大きいし、ベルトと立体機動装置の破損がわかりやすいようにされた白いズボンは膨張色だというのに細くスレンダーな体に映える。それにゆるく波をうつミルクティブラウンの髪。触れたくなる厚い唇に大きなきらきらと光る瞳。
「君の自信過剰はいつか身を滅ぼすんじゃないかな」
エルヴィンが上質な紙を畳みながら言う。
「そういうことじゃないの!」
名前は黒いブーツをこつこつと鳴らして机に近寄った。
エルヴィンがそんな名前を見るのに顔を上げると触れる唇。
「シてよ」
唇の上で呟かれたその台詞に彼は口の端をあげた。
「私もただ君の慰み者になるのはごめんだな」
「好きっていってんのよ馬鹿!バカヴィン!」
顔を真っ赤にして憤慨したように叫ぶ彼女にエルヴィンは目論見通りというように笑った。
「名前、おいで」
鍛え抜かれた筋肉質な腕に抱かれ二人は執務室の奥の仮眠室に消えた。
望みながら
死んでゆける