*リヴァイが訓練兵時代/捏造注意


「貴様は何者だ!?」

これまでの自分を否定しまっさらの状態から兵士になるという入団はじめの儀式。
憲兵団に入りたいから、巨人を殺したいから、仇を取りたいから、などという者が多い。
馬鹿らしい、と彼は思った。ゴロツキであった自分には守るものなど何もない。ここにはエルヴィンの命により三年間訓練を受けてやるだけ、それだけだ、と。

「ウォールシーナ西部突出区ヤルケル区から来ました!名前・名字です!私、空を飛ぶために来ました!」


凛とした表情で高揚とした表情の少女は明らかにこの組織の中で浮いているのがわかった。
教官でさえも同期になるであるだろう周りの(これから同期になるであろう)訓練兵たちも絶句している。
ふん、とリヴァイは鼻を鳴らした。テンプレートと化した大義名分を述べるやつらより面白そうなやつなのは確かだった。






「リヴァイ、なにぼーっとしてんの」

壁外調査前日の立体機動装置の最終調整。
手慣れたようにベルトに機具を付ける名前はボンベを眺めながら止まっているリヴァイを目に留めた。

「ボンベに汚れでもついてた?」
「いや・・・」

気付いた瞬間に目に入ったガスボンベは一点の曇りなくぼんやりとした彼の目を映した。

「ぼんやりして大丈夫なの、人類最強のリヴァイ兵長?」

「見くびるなよ名前大尉?」

にやり、と顔を見合わせた。空を飛びたい、そういった彼女の立体機動のセンスはピカイチで座学の残念な成績を補っていた。
身軽な体で空を飛ぶように訓練場の森を駆ける名前は短かった髪を伸ばして顔だちも大人っぽくなり、そして幾度の壁外調査から生還し大尉、という立場までもらうようになっていた。
教官にまで絶句されたあの時とは大違いだな、と笑い殴られたのは記憶に新しい(彼女は女としてはありえないほどの対人格闘能力を持つ。)

「おい、明日も死ぬなよ」「だいじょーぶだって。」

まだ飛びたいよ私は。死地に出向くにしては爽やかな笑顔にリヴァイははじめて彼女を見たときのように鼻をフンと鳴らし彼女の立体機動装置の肩の紐をつかみ引き寄せ唇を寄せた。









呼吸を許して

(まだ死ねないよ)(あなたと空を飛びたいんだもの)








連載にしようかと思ってた没作。
オチはないです。