人類最強の潔癖人間、その名もリヴァイ兵士長殿が率いる特殊部隊である調査兵団特別作戦班通称『リヴァイ班』にはあるルールがあった。
それは一週間にいちど必ず大掃除の日を設けること。
「ペトラー私マット交換してくるからゴミ捨てて掃いといてくれるー?」
「重いから気をつけてね名前」
いい奥さんになるだろうテキパキと掃除をするペトラを横目に私は二段ベットから下ろしたマットを二枚持ち上げた。
確かに重いがこんなものも持てないほど貧弱でリヴァイ班に指名されるわけがない。
なにしろ私は立体起動の安定力より腕っぷしの強さによるうなじの削ぎの深さで選ばれたのだ。
(さっさと終わらせたら兵長に会えるかな)
平和な時、脳裏を横切るのは付き合いはじめてから少したっている愛しい人であり、戦時においても自分の1番信頼している人物。
「遅ぇ」「へ」
二人分のマットを抱えた私の頭を容赦無くバインダーで叩いたのは
先ほど考えていたその人。
「兵長、なんでこんなとこに?」
「チェックしねぇとマット変えねぇ阿呆がいるからな、お前が最後だ」
へえぇ左様でございますか。さすが潔癖は違いますねーとマットをどすんと床に落とす。その瞬間散った埃にリヴァイは顔を顰めた。
はああ疲れた、と思って置いたマットに座り込むと兵長が私の肩をぐいと掴んだ。
「へ、いちょ」
私何かしたっけ今埃散らしたから?それともマットを片付けるのが一番最後だったから?どうしようペトラ助けてええええ。
そんな私の焦りとは裏腹に柔らかいものが唇に触れた。
「口開けろ」
まるで兵長に潰されるようにマットに押し付けられる私。後頭部を固定されているせいで引くことも出来ない。
唇を固く閉ざす私にリヴァイ兵長はいつも通り鋭い目をギラギラとさせて笑った。捕食者の笑み。
腰が引けた私をもう一度強く引き寄せ唇を合わせると割り込ませられる舌。
「・・・っ!・・・はあ・・・んん」
貪るようなキスに吐息が漏れると兵長は満足げに微笑んだ。
それだけで跳ねてしまう腰が悔しい。
いつもは戦場で超硬質スチールの双剣と立体機動装置を操るごつく大きい手。それがわたしの隊服の太ももをす、となぞり立体機動装置のベルトがはずされた。
「・・・名前」
耳元で名前を呼ばれるとどきりとしてしまう。黒髪に抱きついて引き寄せるとリヴァイの空気が和らぐのがわかった。
そのとき。
「え、兵長と名前さん・・・???」
倉庫の扉が軋んで開いて、覗いているのは顔を真っ赤にしたエレン。
「ごごごごゆっくり!!!!!」
マットをばたんと落として去ったエレンをリヴァイは仏頂面で追いかけていった。
見られてしまった恥ずかしい、と思いつつも緩んだ頬は抑えることができなかった。
三分間の毒