『精霊のイタズラ』 この日、夜遅くに地竜族の青年が伊吹の元を訪ねた。 相馬だ。 部屋の前まで行くと、軽くドアを叩く。 「入るぞ、伊吹」 返事はない。 寝てるのか、などと思いながら、相馬はそのまま部屋に入る。 中にはいると暗闇の中、一人ベットに座る伊吹。左手で額を押さえ、右手はベットに掛かる布団を握りしめ、まるで『何か』から耐えるかのように、一人苦しんでいた。 相馬は慌てて近寄ると、その背中をさすりながら呼びかける。 「…伊吹、お前――――」 その先は言えなかった。自分の考えを肯定してしまう気がして。 「……、相馬、か」 伊吹からは苦しげな声と荒い息遣いが漏れる。 少しでも楽にしてやりたくて、相馬は親友の身体を支えてやる。その表情を見ようと覗き込んだ瞬間、相馬の動きは止まった。 伊吹の瞳は、妖しく輝いていたのだ。 ![]() ![]() |