▼ 出会う(天)
これは偶然?それとも必然?

「お嬢さん、落としましたよ」

はい、と手渡された家の鍵。いつの間に落としたのだろうか

「ありがとうございます」
「じゃ、どうも」
「ま、待って下さい!拾って頂いたお礼、したいです」
「ああ…別にいいって。そんな」
「でもこれが無いと本当に大変な事になる所だったので、是非…」
「…じゃあ、ちょっとお茶でもするか?」

にかっと笑う顔は少年のようにあどけなく、人当たりの良さを感じさせるけれど所々に傷の痕が残っていて、よくよく考えると危ない人なのかも知れない…

「名前教えてよ」
「わ、私なまえです。みょうじなまえ」
「へぇ…なまえちゃんね。名前も可愛いんだ」
「そんな事ない、です」
「俺はね、天。天貴史」
「天、さん」

あの時、何故呼び止めてしまったのか未だにわからない。けれど、初めて会った時からこの人に惹かれていたのだと後になって気付いた。