▼ ときめく(涯)
放課後の教室に残る二人

遠くで生徒達の声が聞こえる。開け放たれた窓際のカーテンが風に靡いてふわりと揺れた。

「ごめんね、もう終わるから」
「別にいいけど…何で俺のなんだよ」
「だって工藤くんのノート、見やすいし分かりやすいし」

書き写してるだけで頭良くなりそうでしょ?

「…授業中寝てるみょうじじゃ無理だと思うけど」
「確かにそうだね」

ふふふ、と笑ってノートに視線を落とす。待ってる間、図書室から借りてきた本を読んで時間を潰していた涯はそろそろ終わりそうだと帰り支度を始めた。

「あ、待って、最後のこれ何て書いてあるの」
「ん?ああ、それは」

横から伸びた腕がノートを取ってなまえのすぐ隣に顔を寄せる。間近で見る涯の表情は真剣で、もう少しで触れてしまいそうな距離に思わず胸が高鳴った。

「…あ、あの、分かった、うん」
「じゃあもういいよな」
「ありが、と」

赤くなった顔を隠すように俯くと慌ててノートに書き込む。でも何て書いてあったのか聞いていたのに全然覚えてなくて、頭の中は彼の事でいっぱいだった。