「なまえ、ついてるよ」

口端につくクリームを取ってやれば
ありがとうと彼女はくしゃりと笑った

そそっかしいなまえとは幼なじみ
泣いたら慰めたし虐められたと言えば
なまえをいじめた奴を殴りにいった

小さくて弱いなまえを守るのはいつだって僕だったんだ
これからもずっとそうであるだろう。
そう思ってきたんだけどな

『今日なんだけどね、その…』

「彼氏でしょ?」

『うん…。ごめんね、』

「いいよ、気にしないで」

なまえもいつのまにか恋をして
誰かの彼女、なんてものになった

ずっとずっと僕の傍にいると思ってたんだ
だけど気がつけば君の手を握っていたのは
僕の知らない奴だった

なまえと別れ図書館へと足を踏み入れる
中庭を見渡せる席へついて外を眺めていれば
なまえとその彼氏がやってきた

近くのベンチに腰かける二人
二人は何かを喋って笑い合っている
それからなまえはそいつの肩に頭を乗せて
また男がなまえに何かを言った

そして二人の距離は無くなった

まるで僕に見せ付けるような光景を
僕が我慢できるわけもなく
僕は図書館を足早に君のいないところへ逃げた

なまえには幸せになってほしい
だけど君を幸せにするのは僕ではだめなのだろうか

何度したかわからない自問自答にため息をつく

「ムーニー」

「パッドフットか」

「こんなとこで何やってんだよ?」

「見てわからないかい?」

「あぁ、現実逃避な」

「否定できないのが悲しいよ」

隣に並んだパッドフットに問う

「幸せにしたいんだよ、自分の手で
だけどそれをするには彼女から幸せを奪うことになる
ねぇ…シリウス、僕は」

「奪っちまえばいい」

「…また人ごとだと思って」

「いいや、かなり真剣だぜ。
ムーニーが幸せにするって言うなら
奪っちまえばいいじゃねぇか
どっちみちなまえは幸せになるんだ
だったらムーニーとなればいいだろうよ」

妙にしっくりきた自分がいて
本当に奪ってしまおうかなんて考えていた

「まぁゆっくり考えることだ」

ぽんと僕の肩に手をおいて
シリウスは行ってしまった


なまえの笑った顔が脳裏に霞む
僕は、あの笑顔が大好きなんだ

また一つため息をついたら
遠くで君の心配するような声が聞こえた気がした








大切なただの幼なじみ
(君の目には僕はそう映っているんだろう)




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