可愛い羊が一匹


今日ほどエバンズに感謝した日はない
心からそう思う
あぁ神様、仏様、エバンズ様々

始まりはひょんなことから、
談話室でいつも通りジェームズがエバンズを口説いていた

「僕のリリー!その眠たそうな目も可愛いよ!」

近くで聞いていた俺とムーニーは
また始まったと課題をやっていた
俺は悪戯の試作品を作るという課題だ

「もういい加減にその見え透いたお世辞はやめたら?」

「お世辞なんかじゃないさ!君は本当に愛らしいよ!」

「ったく…あ、愛らしいといえば…。」

エバンズと目が合う
俺別に愛らしくなんかないけど
数秒見られたと思えばにやりと笑って
(絶対にあの時の笑みはにこっとかじゃなくにやり、だった)
俺の元へ歩み寄り

「可愛いユキ見たくない?」

ユキ、その名前は俺がいつも一緒にいて
恋をしている相手だった

「…いきなり何だよ」

「言った通りよ?私あの子と同室だからわかるけど
ユキは夜、それもお風呂に入った後は可愛さ5割増しよ!!」

拳を握りながら話すこいつがちょっと怖くなったが
可愛さ5割増しのユキも見てみたい…

「で、どうなの?見たくないの?」

「リリー、パッドフットより僕と話」

「ちょっとは黙る事を覚えなさいよ駄眼鏡」

あ、眼鏡にヒビが
ついにはリーマスに泣きついてやがる
リーマスはすごく嫌そうに課題をこなしながら
ジェームズを慰める

「…見…たい」

「そうよね!ユキのこと大好きだものね!」

「うっせ!」

じゃあ見せてあげるわとエバンズは女子寮に向かって

「きゃー!!ユキ大変よ!!早く談話室に来て!!!」
と叫ぶ

パタパタとスリッパの音がする
現れたのは、

『リリー!!大丈夫!?』

もこもこの羊だった
正確に言えばもこもこの羊の着ぐるみを着たユキだった
ご丁寧にフードまで被って

「あっごめんなさい、寝ぼけてたみたい」

『そっかーよかったぁ』

天然なこいつは騙されたことに気がついていないらしい
小さいこいつが余計に小さく見えて
着ぐるみとお揃いのもこもこのスリッパが
またユキらしいと思った

ね、可愛いでしょと耳元でエバンズに言われれば
激しく首を縦に振った

「今日は羊さんなのね」

『うん、今日ちょっと寒いから』

「あ、なんかシリウスが話したいことあるみたいよ?」

そうなんだと俺の隣に座れば
気をきかせたのかリーマスはジェームズを引っ張り
エバンズは風呂に入ると出て行ってしまった

『皆眠いのかな、で、シリウスなぁに?』

「あ、あぁ。……言うこと忘れたからいいや。
でも、もうちょっとここにいてくんないか?」

彼女はふにゃりと笑えば俺の肩に寄り掛かる

『シリウスちょっと肩貸してねー』

いい位置にあるからと眠いのか目を擦るユキを見ていたら
とことん甘えさせたくなった

「なぁ、…メーって言って」

『メェー!』

「本当に羊みたいだな」

くすくすと笑い
羊の頭を撫でていれば気持ち良さそうに目を細めた

『ふわふわでしょ?気に言ってるの!』

「あぁ、可愛い」

『…もー、シリウスは!
あ、ねぇシリウス…』

「なんだよ?」

『わんちゃんになって?…だめ?』

上目遣いでしかももこもこの小動物に
だめ?なんて言われて断れる男がいるなら見てみたい

「……ちょっとだけだからな」

犬になってソファに寝そべると
ユキも身体を丸めて俺に寄り添ってきた

『ふふ、わんちゃんかわいいねぇ』

俺を撫でながらいるユキは今にも寝そうだ

『わん、ちゃん…も、ふわ…ふ……』

寝たようで俺は人に戻ってユキを起こさないように毛布をかけた

「お前のが可愛いっつーの」

頬にキスを落とせばまたメーと鳴いた




















(…あたし、寝ちゃ、……!!)
(あ?起きたのか)


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