揺れない天秤、答は君


私のため息が出たのももう何回目だろうか
くだらないので無視を決め込むが
何度も肩を突いてくるのでしょうがなく折れた

「…なんだ。私は今レポートをまとめているんだが。」

『あのですね、「私と仕事どっちが大事なのよ!」
っていう女の子を先輩はどう思います?』

「…そんなこと思っていたのか」

『いえ、そうじゃなくて。』

ドラマを見ていたら言っていたのでと
私の髪で三つ編みをしながら言う
そして三つ編みをするな

「別にいいんじゃないか?言ったって」

『男の人はうっとおしがるって…』

「それはそいつ自身の器の大きさだろう」

うーんと考え込むユキ
じゃあルシウス先輩はどうなんですか?
と今度は髪を櫛で梳かしながら聞いてくる

「私は言われても仕事を選ぶだろうな」

『やっぱり』

「予想していたなら聞くな」

『万が一ってこともありますからね』

ユキは髪から手を離し私の肩に頭を乗せた

『もし、私が誘拐されて一億と引き換えだ
と言われたら先輩はどうしますか…?』

この位置からだとユキの長い髪のせいで顔が見えず
全く表情が見えない

「…多分一億は用意しないだろう」

『それは、何故ですか?』

少しだけこいつの声が震えた気がした

「一億なんか用意しなくても私が奪い返しに行くからな
誘拐犯に御礼もかねてな」

鼻で笑えば横から腰周りにぎゅっと巻かれた腕

『先輩からの御礼は…さぞ怖いでしょうね』

「十倍程じゃ足りないくらいにくれてやるさ」

ふふっと笑う彼女はやはり泣いている
それでも言葉を続ける

『ルシウス先輩、もし…ナルシッサ先輩と私だったら…』

「お前に決まってるだろう、馬鹿者」

小さく震えるユキを撫でる

「不安になるな。私はお前で満足しているし、
……愛している。」

勢い良く上げられた顔はひどく不細工だ
苦笑し涙を溜める目元をキスで拭えば
私も愛してるという言葉としょっぱいキスをもらった

















(君の代わりなんていないんだ)
(やっぱり貴方がいい、貴方じゃなきゃ嫌だ)


prev next

bkm
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -