世界が変わった瞬間


いつだって私は一人だった
それでいいと思っていた
裏切られたら悲しいから
人は皆離れていくから

寂しく、悲しくなるなら
最初から一人がいい

助けなんかいらない
呼びかけに応えてくれなくたっていい

私は強いから一人でいい
そう思っていた




「ねぇユキ、なんでいっつも一人でいるんだ?」

『ジョージ?フレッド?』

「どちらでしょーか!」

『…はぁ、』

どっちでもいいと歩き出した私を
追いかける赤毛

「僕はジョージ!いい加減覚えてよユキー」
なぜ覚えなければならないのか
私には他人の顔を覚える必要なんてないのに

「ユキ!今日な、相棒とスティーブに悪戯をしようと思」

『あ、そう。それ私に関係ある?』

え、と固まったジョージに成りすましたフレッドを
置き去りにして私は図書館へと入った

私は何故かあの双子の見分けがつく
なぜだろうなんて今初めて疑問に思ったくらい
自然なことだった


そんな疑問を気にせずに
闇の魔術を片っ端から習得する
一人で生きていけるだけの知識を得ていく守ってもらわなくても
人を信じなくても生きていける知識を得ていく

昔こそは躍起になっていたが
今は坦々とした作業だ
何の感情も持ち合わせない


隣に誰かが座っりドサッと教科書が置かれた
気にせず私は羊皮紙に文字の羅列を書き写す

「すいません、インク忘れちゃって…
貸してもらえます?」

なんだこいつは、
図書館に勉強をやりにきたのに
インクを忘れるのか
声には出さず皮肉を言ってみた

『どうぞ、』

私とその人の中間にインクを置く

「ありがとうユキ」

なぜ私の名前を知っているんだ
不思議で顔を上げればそこにはフレッドがいた

「やっと気がついてくれた
普通声でわかると思うんだけど」

『ごめんなさいね、気がつかなくて』

まぁ、いいさ
とフレッドは言う

「ユキはさ、きっと怖いんだよな」

『は?』

私は眉間に皺を寄せて聞き直す

『何を言ってるの?』

「一人でいるのは寂しいし怖いだろ?
だけど他人と交わって
人に裏切られるのも怖い。
何があったのかはわからないけど
だから今もこうやってユキは
一人で生きていくのに勉強してるんだろ?」
フレッドは本を持ち中身を
ぱらぱらとめくる

『あなたに何がわかるの』

気づかないうちに言葉を発していた

「わからないさ、
だけど理解しようとすることならできる」

『そんなことを言ったってもう惑わされない。
あなただって私を裏切る。』

「裏切らないさ。約束する。」

『約束なんて無意味よ』

「じゃあせめて理解させてくれよ
君の寂しさがなくなるまで一緒にいさせてくれよ。」

頼むと言うフレッドに
私は押し黙ってしまった

「他のやつを信じろとは言わない。
だけど俺だけは信じろ。
俺はユキを裏切らない。」

力強い目だった
黙って小指を出されれば
私は自然と指を絡めていた

『裏切ったらおぼえときなさい』

「了解、姫」





この時私の世界が少しだけ
ほんの少しだけ開けた気がした

















(フ、フレッド!私友達ができたわ!)
(やればできるじゃんか!)
((少し勇気を出せば世界ってこんなに変わるんだ!))


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bkm
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