さよならは突然に


『ねーシリウスー』

「ん…?」

俺は何もせずにぼーっと外を見ていた
なぜだろうかこの時は本当に無気力だったんだ

『この間言ってたホグズミートのね………聞いてる?』

「ん。」

この時何を考えていたかなんて覚えていない
でもその時の俺を今の俺は殴ってやりたい

『…シリウス、話聞いてよ……』

「ん」

『…………別れて』

「ん、」


ん?別れてだと?
今ユキはそう言ったのか?
振り返ればユキの姿はなく
その言葉が本当だったことがわかった

部屋を飛び出し談話室にいた奴に
狂ったようにユキの居場所を聞くと
ユキは部屋に入ったらしい


それからユキは部屋から3日間出てこなかった
ようやくユキを見つけ話かける

「なぁユキ」

『……なにブラック君』

ブラック君、彼女が俺をそう呼んだのは
付き合うよりずっと前
初めて会った時にユキはそう呼んでいた気がする

「お前、別れるとか言ってたけど」

俺は了承した覚えはないぜと
言いはじめる前にユキが言葉を発した

『好きな人が出来たの』

俺は血の気が引いた気がした
ユキは構わず続ける

『あそこにいる人なの。
とても優しい人。ちゃんと私と向き合ってくれる人。』

ユキに向かって手を振る男
ユキもそれに応える

『シリウスはさ、もう長い間私を見ていなかったでしょ?』

私には堪えられなかったの
シリウスが悪いわけじゃないの、私が悪いの

と続ける彼女の言葉もよく理解ができなかった

『もう行くから』

と行こうとするユキを俺は腕を掴んで引き止めた

「最後に一つだけ聞いてもいいか…?」

『うん。』

「お前は、ユキは。
俺といて、………幸せだったか?」

『…うん。幸せだったよ、とても』

「そうか…」

俺はするりとユキの手を離した
最後にみたユキの笑顔は俺に向けてではなかった
だけどその笑顔を見たから
手を離す勇気が持てたんだとおもう



ユキのことは本当に愛していた
他の女を全部切ったくらい
泣き虫なユキ
笑ったユキ
真っ赤に照れるユキ
怒るユキ

色んなユキが頭に浮かんで
どれだけ彼女が俺にとって大切だったかを思い知らされた

だけどお前が大切だから、離してやるよ
ただ一つだけ約束してくれよ


幸せに、世界で一番幸せになってくれ













(君と過ごした日々を、愛したことを忘れない)


prev next

bkm
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -