喜ぶべきこと


いつもなら何も考えずに開く扉
だけど今は扉がすごく大きく私に向かってくるように見えた
扉の前で入ろうか入るまいか迷っていれば
扉が開き短く入れと聞き慣れた声がした

行くしかない

その言葉をぐっと飲み込み私は彼の部屋に足を進めた

『ヴォルさん、』

「何だ」

珍しく研究書以外の本を読んでいた
ソファに体を預けリラックスしているんだろう
いつものような気の張り詰めた声がしなかった

『……』

「何か用があって私の部屋の前にいたんじゃないのか」

『………………はい。』

「……昨日のことなら、その……悪かった
お前は何も悪くない」

『…でも』

「もう、いいのだ」

ヴォルさんは何処か諦めたような顔をして
本を閉じて私を呼んだ
座れと言われ彼の隣に座ればじっと見られる

「優季、
…お前は、私にも幸せになって欲しい。
そう言ったな」

『はい』

「それは今も変わらないか?」

私はついさっき入ってきたナギニちゃんから
目線を上げヴォルさんと向き合った

『変わりませんよ』

むしろ強くなりましたと言えば
ナギニちゃんが手にほお擦りをした

「……そうか、」

それだけ聞くと彼は何処かへ行ってしまった
私はこのお屋敷に来た時のことを考えていた
最初は少しだけヴォルさんが怖かった
だけどだんだん優しい所とか見えていなかった部分が見えてきて
怖いという感情はなくなっていった
むしろ彼といる時間は穏やかで幸せさえ感じた
本当に使われる為に連れて来られたのかと
疑問に思う程だったから


『ナギニちゃん?』

“なんでしょう?”

『私ね、今幸せだよ』

“本当に不思議な事を言いますね
優季様は拉致されたんですよ?”

『だとしてもなんか幸せ感じちゃったからさ』

しょうがないじゃないとナギニちゃんを撫でれば
目を細めた

“私はご主人様と、優季様が幸せなら私も幸せです”
小さくナギニちゃんが言った

『ー!!ナギニちゃんっ』

“くっ苦しいですっ”

『もう大好きー!!』


ナギニちゃんを抱きしめていれば
ヴォルさんが入ってきた
真っ黒な梟を連れて

『大きいですね』

“ご飯ですかご主人様”

「“違う、お前には別の物を用意させる”」

『よかったねナギニちゃん!』

嬉しいのかしっぽを左右に振るのがとてもかわいらしかった

「優季」

『はい?』

「これを使え」

『…え?』

何に使えというのだろう
次に聞こえた言葉は
この人からは絶対に聞くはずもない言葉だった



















(お前を帰してやる、ホグワーツに。)
(聞いた瞬間に頭の中が白で埋め尽くされた)


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