この気持ち教えておくれよ


つぶっていた目を開ければ
そこは見慣れた自分の部屋だった

『ヴォルさん?』

どうかしましたか?と声をかければ
なんでもないとそっぽを向かれる

『でもなんか疲れてるみたいですし…』

「うるさい!私に干渉するな!」

干渉するな…って

『心配してるのに怒ることないじゃないですか!』

「今私はいらついているんだ!それくらい気が付け!」

『いきなりすぎてわかりませんよ!』

気づけばお互い怒鳴りあっていた

『……』

「………」

『…すみません、大きな声出して』

「…お前も疲れただろう、もう休め」

そう言って彼は部屋を出て行った
彼が出ていく扉の音と同時に涙が溢れた
なぜだかわからないけれど涙が出た

もう疲れたし寝ようと大きなベッドに横になる
だけどいつものような眠りの渦はやってこない

寝付けない私は少しだけ屋敷の庭を歩こうと外へ出た

さく、さくと草を踏む音が心地好い
庭の白薔薇と深紅の薔薇がヴォルさんを思い出させた
香をかげばきつくないけれどしっかりとした独特の香りがした

『はぁ、』

ため息一つ吐き出せば後ろから
柔らかい声がした

「優季様」

『あ…ルシウスさん』

「どうなさいました?眠れませんか?」

ちょっと、返せば貴女方は本当に、と言われた

「優季様と同じように我が君も悩んでおいででした
…これは推測ですが、何かあったのでしょう?」

肩にストールをかけてくれたルシウスさんにお礼を言って
出掛けた時のことを話した

「そうでしたか…」

『私、何か悪いことでもしたんでしょうか』

「いいえ、我が君は今悩んでおいでなだけです。
どうかご自分をお責めになりませんよう」

『……はい。ありがとうございます』

もう夜は冷えるからと彼は部屋まで送ってくれた

『ルシウスさん、ありがとうございました』

「当然のことでございます。
あと、これをどうぞ
ゆっくりと眠れるでしょう」

杖でホットミルクを出してくれた
その時のルシウスさんが
いつもより優しく笑っているように感じた

『じゃあお休みなさい』

「はい、いい夢を」


閉まるドアを見ながら今日はよく眠れそうだと思った
口に広がる甘みと香るバニラが
心を少しだけ軽くしてくれた気がした





















(明日、ちゃんと話そう)
(気がついたけれどこの気持ちの対処方法を私は知らない)


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bkm
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