屋敷しもべにご褒美を


コツコツという足音と
スルスルという地を這うような音がする
この屋敷をよく知らない私をナギニちゃんが
不憫に思って案内してくれていた

“ここからあそこまでが客室でそこの小さな扉がキッチンです”

小さな扉、見てみると普通のドアの半分ほどの大きさだ
食事は屋敷しもべが作るから
というのが理由だとナギニちゃんが教えてくれた

『ナギニちゃん、』

“なんでしょう”

『ナギニちゃんって甘いもの食べれる?』

“野菜以外なら大丈夫ですが一番はお肉ですね”

『ケーキ食べたくない?』

“私はお肉の方が好きです”

『…作ってきてもいいかなぁ?』

“私は構いませんがあいつらが何を言うか…”

『…?大丈夫大丈夫!』

じゃあ行ってくるねとナギニちゃんを一撫でしてその扉を開けた

そこには屋敷しもべが二匹、せっせと働いている
こちらに気づいた屋敷しもべ達は
何故か顔色を悪くしてどうしたら、などと言っていた

『あの、』

「お嬢様、このような場所には来てはなりません!」

『ケーキを作るだけですから気にしないで下さい』

「ケーキなど私たちがすぐお造りしてお届け致します!」

だからこれ以上勘弁してくれとでもいいたげな瞳だった

『でも、自分で作りたくて…』

「あぁ、お嬢様…。わかりました。そんなにおっしゃるなら
致し方ありません。ではこちらをお使い下さい」

屋敷しもべがぱちんと指を鳴らせば
私の前には様々なフルーツや牛乳や卵、砂糖などの材料が
これでもかと積まれていた

『わぁ…すごい!ありがとう!』

「とんでもございません、お嬢様
何かありましたら私めにいつでもお申しつけ下さいませ」

『はい、わかりました!』

私は早速作りはじめた











時間がたつのは早くてケーキを二個作ったら
ちょうど午後のお茶の時間になっていた
作ったのはチーズケーキにチョコレートケーキ
ケーキを綺麗に切り分けてお皿にのせて
隣に苺とラズベリーとブルーベリーを添えた

『うん!上出来!』

二つのお皿をもって屋敷しもべ達に近づく

『屋敷しもべさん、これよかったらどうぞ』

「そんな滅相もございません!」

「私たちは帝王にお使えしているだけで幸せなのでございます」

『でもお仕事頑張ってるし、
甘いものでも食べて疲れを癒して下さい』

はいと有無を言わせず渡すと
有り難き幸せ、と泣きながら食べてくれた

「おいしゅう…ございま、す」

「ええ、とても……っ」

『泣かないで下さいよ、ね?』

「はい、お嬢様」

と泣くのを我慢してケーキを食べていた


キッチンからお茶とケーキと生肉の塊を一つを
ヴォルさんの所に運んで置いて下さいといって私は彼の部屋へ足を運んだ

『ヴォルさぁーん』

「……入れ」

扉を開ければ机に向かうヴォルさん
テーブルの上には頼んでいた物が用意されていた

『ヴォルさん、お茶にしましょうよ』

「一人でやってろ」

『一人じゃ寂しいですもん。
あとナギニちゃんも一緒にいいですか?』

「構わん」

『じゃあナギニちゃん呼んで下さい』

「……“ナギニ、来い”」

小さくそう彼が言えば扉が開けられナギニちゃんが入ってきた

“お呼びですかご主人様”

「そいつとお茶してやれ」

『ナギニちゃんの為にお肉も用意してもらったよ!』

“ずいぶんと美味しそうですね”

『すごく大きい塊だよね。
……ヴォルさん、』

はぁとため息が聞こえてヴォルさんがこっちに来て
反対側のソファに腰を下ろした

『今日のケーキは私が作ったんです!』

ほうと口に含む彼

『あの、どうですか?』

「…悪くはない」

その言葉が嬉しくて私は思わずやった!と叫んでしまった
隣でナギニちゃんは塊を丸飲みしていたけれど
うん、グロテスク

二人と一匹でお茶をするのは周りから見れば異常だが
私たちは確かに幸せな時間を感じていた
明日は何をしようかしらと考えていれば
あんまりお転婆をしてくれるなよと言われた
はいと答えたがやっぱり考えはどんどん膨らんでいった


















(ナギニちゃん、ケーキ食べてみる?)
(では一口)
(どう?)
(美味しいですけど私には味が濃いですね)


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bkm
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