さあ手を出して


扉を軽く叩けば開けられるドア

『ヴォルデモートさん、梟を貸してください』

「……お前は馬鹿か?」

いきなり馬鹿とか失礼だと思うんだけど
諦めないで言ってみる

『馬鹿じゃないです。アルバスおじいちゃんに
元気だから、くらい手紙を出したくて』

「今お前は軟禁状態なのを忘れるな」

『わかってますよ、でも皆を心配させちゃう…』

扉が少しだけ乱暴に叩かれ外から
我が君と急いだような声がした

「なんだ」

「それがっ…優季様が…」

『私ならここにいますよ』

「全く優季、お前は…。
心配ない、下がれ」

「申し訳ございませんでした」

足跡が遠ざかるのを確認したヴォルデモートさんは
また机に向かってしまった

『ヴォルデモートさん…』

「うるさい。あまり私を怒らせるなよ」
怒気を感じてようやく口を閉じる

ヴォルデモートさんの部屋のソファに座ればなぜ座ると問われる
え?だめだったの?

『だってあの大きいお部屋で一人は寂しいです。
それにヴォルデモートさんがなんで
私を連れて来たのか聞いてませんし。』

「…怖いもの知らずも恐ろしいな」

それからヴォルデモートさんは
私を使って世界を手に入れたいと言った

『お断りします』

ぺこりと頭を下げれば
本日二回目の馬鹿が降ってきた

『私は皆と楽しく生きていきたいんです。
もちろんヴォルデモートさんにも幸せになって欲しいです』

率直にそう思った
だからお手伝いできませんとそう言った

「皆で幸せに、だと…!?
生温いことを言うのも大概にせよ小娘!」

私の喉には杖
だけど私はひるまない
否、ひるんではいけない
この人を突き放してはいけない

『ヴォルデモートさんは寂しいんでしょう?
部屋に来る人を見てれば分かります。
皆貴方に会う時には怯えて偽の忠誠を語って
自分の身を守る為に貴方の側にいる』

「黙れ、あいつらは私に…!」

『貴方の周りには本物がないから苦しいんでしょう?』

「黙れ小娘!!それ以上言ったら殺す!!」

余計に杖が喉に食い込む

『だったら私と友達になってください。
私が本物、を教えてあげます』

彼に向かって手を差し出す

「やめろ、やめろぉ!!」

『ヴォルデモートさんは一人じゃないです。』

「やめろーー!!!」

彼を抱きしめる
一瞬彼は後ろに身を引いたが私を受け入れた

『私がいます。貴方が少しでも幸せを感じられるまで。
だから、まずは友達になってください。
お願いします。』

杖を手から離し無理矢理握り合わせれば
ぽかんとする闇の帝王
帝王ともあろう人がひどく間抜けな顔だ


『これで友達、です!』

ふふと笑いじゃあまた来ますと
扉を閉めて廊下に出れば
何もなかったかのような静けさがあった

少しだけ気分がいいのを隠してまた自分の部屋へ戻った





















(闇の帝王とお友達になりました)


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bkm
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