不幸せと言われるけれど


『教授、話を聞いて下さい』

「帰れと言っているのがわからんか」

さっきからこの繰り返しだ
誤解を解きたくて私は此処にいるのに

足を早める教授に追いつくように
小走りになる私を無視して教授は自室へと向かう

『ルーピン先生のことも、さっきハリーといたことも
みんなみんな誤解なんです…!』

私の存在なんて知らないとでもいうような教授に
涙が溢れ出す

『もう…、だめで、…すか』

足を止めた私に目もくれず教授は歩き続ける

切ないような悲しいような悔しいような
なんだかよくわからない気持ち

『本当に、もう戻れないですか!!?』

私は去り行く教授の背中に問いかけた
答えがほしい、だめだって構わない
きちんと目を見て言って欲しい
だから、振り向いて。お願い…


そんな思いも叶わないまま
角を曲がった教授は見えなくなった


『…ふ、…ぅ…なん…で、?』

涙と嗚咽が止まらない
その場に崩れるように座り込む

心はもうボロボロだった




「優季」

その声は本来聞くはずのない人のものだった

『…ヴォ、ル…さ、』

何故此処にいるの?とか
後で会いに行こうと思ってたとか
言いたいことはたくさんあるけれど
それが言葉になることはなかった

横抱きに抱えられ私は彼にしがみついた

「もう泣くな、優季」

その言葉にどこかほっとした
彼の首筋に顔を埋めまた泣いた


ディメンターがヴォルさんを見つけやってくるのが
場の空気から分かった
そしてその空気から先生たちも集まってきた
もちろん彼も例外ではなかった


「トム、」

アルバスおじいちゃんだった

「あぁ!!優季!!」

トローニー先生の声がした
やっぱりパニック気味みたい

「ヴォルデモート、生徒を放せ」

「ほざけ」

教授の声がする
だけど今は聞きたくなかった


『ヴォルさん、』

「なんだ?」

『私を……連れ、去って……』

「「「「「!?」」」」」

「分かった」

彼にしがみつく手を強めればぐらりと視界が歪んだ


「…優季着いたぞ」

『……っ、…は、い』

涙がまだ止まらない私を気遣かってか
それ以上何も言わなかった

その後ヴォルさんは私を部屋に連れていってくれた

ベッドに下ろされる
だけどヴォルさんはずっと傍にいて
私の背中を撫でてくれていた

いつしか私はその手の優しさに意識を飛ばしていた
脳裏に浮かんだ教授を拭うことはできなかった


















(もうどうなったっていいの)
(闇に染まっていくこいつを止める資格など私にはない)


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bkm
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