伝えるという事


「チェックメイト」

その言葉がどこか重く聞こえた

『…ロンは強いね』

「そうかなぁ、嬉しいよ!」

「優季」

『ハリー、何?』

「ちょっと話せるかい?」

『うん。ロンすごく楽しかったよ
また一緒にチェスしようね』

「もちろん!」

そう言ったロンはすごく嬉しそうで
そんなロンを見ながら
ハリーと一緒に談話室を出た

『ハリー?話って…』

「中庭にでも行かない?あ…でも
優季薄着だしちょっと寒いかな…」

私はローブを着ないで出てきてしまった
ハリーはそれを気にかけてくれたみたい
優しいなぁとふと思った

『私なら大丈夫だよ!』

「そう?じゃあこれ着けて?
ボロボロだけどないよりマシだろうからさ」

すまなさそうに謝って
私にマフラーを巻いてくれるハリーが
とても頼もしく見えた

『ありがとう、とっても暖かい』

「よかった…じゃあ行こうか」

二人で中庭に向かい
近くのベンチへと腰を下ろした

「それでね優季、」

『うん』

「何かあったんじゃない?」

『えっ……』

「あっ、違ったならごめんよ
でもいつもより元気がないし
それに…、さっき泣きそうだったから」

『…………ハリーには…、お見通しだったんだね…』

「僕でよければどんな話でも聞くよ?」

『ありがとう、ハリー…』

ハリーの優しさはとても嬉しいことで
思わずすがってしまいたくなる

だけどセブルスはこの学校の教授で
そのセブルスと付き合っている私は生徒なのだ

ハリーはセブルスのことを嫌っているし
そのことで彼に迷惑はかけられない

『私なら大丈夫、だよ』

「でもっ、優季…!」

『ただ気持ちが伝わらなかっただけなの…
私が悪いの……だから大丈夫』

そう言い終わる時に目の前が黒く染まった
そして暖かい温度

『ハ、ハリー…?』

「辛いのにどうして君はそんなに頑張るんだ!
…泣いたって、いいんだよ?」

『っ、でもね、私が悪いのに…私が泣いたら…っ』

「我慢するのがいいこととは限らないよ」

『…っ』

そんなことを言われたら
すがるしかなくなってしまうじゃない

『…ハリー……ちょっと、だけ…胸、貸して…』

「いくらでも」

そう言ってハリーは泣く私の背中を
ずっと撫でていてくれた
その手が優しくて余計に涙がでた






『ハリー、あり…がと』

「…もういいの?」

『ん、へいき…』

鼻声になっちゃったねと彼は笑った
それにつられて私も笑った


二人でグリフィンドール寮に帰る途中
今一番会いたくない人に出会った

「げっ、スネイプだ」

嫌そうな彼とは対象的に
私の心はひどく動揺していた

セブルス、と小さく呼んだ名は
ハリーには聞こえなかったみたい

「おや、これは英雄殿
ガールフレンドと密会ですかな?」

一瞬ジトリとこちらを舐めるように見た
教授の視線が私を犯す


「…スネイプ先生、僕はただ友人と会っていただけです」

「それならいいのですがな」

「ではスネイプ先生僕たちはこれで」

もう一度だけ私を見て教授は
ローブを翻して行ってしまった

思わず行かないでと言いそうになった
だけど隣にはハリーがいる
教授の通っていった道を私はただ見つめていた


「ふう、あーびっくりした。
優季?」

『へ、?』

「どうしたの?ぼーっとして」

『う、ううん!大丈夫…だよ』

「そう?じゃあ寒いし早く戻ろう!
風邪引いちゃうよ」

『ハリー、私ちょっと行ってくる!
スネイプ教授に聞きたいことがあるのを
思い出したの!』

「…そっか、じゃあ先に行ってるよ」

『うん!あ、マフラー!』

「いいよ、着けていって!」

『でもハリーがっ』

「僕は平気。早く行かないとまた忘れちゃうよ?」

『…うん、ありがとう!』


それから私はハリーに背を向け教授を追いかけた
私の後ろのハリーの気持ちも知らずに




















(やっぱり君はスネイプのことが好きなんだね)
(急いで急いで、貴方の元へ)


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