認めるものか


あいつがいなくなってから
随分と静かになった屋敷から外を見る

植えてある白薔薇は相変わらず美しい
だが少しだけ悲しそうに見えるのは気のせいだろうか、

何を思ったのか私は外へ向かった
するとそこにはヒッポグリフが一頭いるではないか
思わず杖を構える

次の瞬間にヒッポグリフの首筋から表れたのは
吠えメールだった


『こんにちはヴォルさん
闇の帝王様、そう呼んだほうがいいかしら?』

手紙から聞こえる声は確かに彼女の声で
懐かしいやらまた私には似合わない感情やらが
私の胸をくすぐる

『そこにいるヒッポグリフはノーブルって言うの
ちゃんとしてるかな?でもいじめないでね』

『あ、そうそう。ノーブルの首に
もう一通手紙があるから読んでくださいね
あと、できればノーブルに
お水とご飯をあげてもらえますか?
きっとたくさん飛んでお腹が減っているだろうから。
じゃあまた。優季より』

そう言って吠えメールはビリビリに破けなくなった
杖を振って水と肉をくれてやる
美味そうに食うのを見ればよほど遠かったのだろう

「アクシオ
…ノーブル、と言ったな。
お前は少し待て」

手紙を引き寄せヒッポグリフを見れば
こちらを見て翼を広げる
さすが彼女の使いだ、賢い


自室へ戻り封を切った

『“親愛なるヴォルデモート様

お久しぶりです。こうやって貴方に手紙を書くのは
なんだか変な感じがします。
少し前までは一緒に生活をしていたからかな?

ところでヴォルさんちゃんと寝てますか?
世界征服もほどほどにしてくださいね
あ、ナギニちゃんは元気ですか?
ベラさんやルシウスさんも
風邪なんか引いてないといいけど…

ちなみに私は元気です!
この間また暴れ柳さんのところでお昼をしました
そうしたらマクゴナガル先生に大目玉をくらいました…
私が悪いんだけどどうしてもあそこに行くと寝てしまうの
本当に直さなくちゃと思ってはいるんだけれど
なかなかうまくはいきません。

そうそう!この間撮ってもらった写真がすごくよくできたの!
送っておきますね
写っているのはみんな私のお友達で
毎日私は楽しく過ごしています

ヴォルさんは楽しく過ごしていますか?
もし楽しくなかったら遊びに行きますから
言ってくださいね!


追伸
できたらナギニちゃんの写真送ってください

愛を込めて、優季』


「めちゃくちゃだな、」

世界征服をほどほどに、とは
ほどほどにしたら征服できないではないか
遊びに行きますからと闇陣営に自分から来るやつなんか
私を崇拝する者かお前くらいだ

「だいたい考えることが…幼稚、なん、だ」

手紙についていた写真を見れば
ヒッポグリフに梟が二羽、小さな小鳥が数匹
それは暴れ柳を背に撮られていた
写真の中彼女はとても穏やかに笑っていて
時々こちらに手を振っている


「…っ、!」

認めたくなかった
私はこんなにもお前を

くしゃ、と握られた手紙は少しだけ
文字が滲んでいた















(たかが手紙がこれほどまでに嬉しい)
(ただただ会いたい、だけど出来ないことが恨めしい)


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bkm
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