目の前の事実


そよそよと柔らかい風が
頬にふれていく。

優季は目を擦りながら
目の前の景色に目を向けた。

『わぁ……!』

目の前には大きなお城
綺麗に管理されたお花や芝生

そんな中世に来たかのような景色を
自分の身長からは考えられない高い目線から見ていたことに、自分は木の上で寝ていたのだとようやく気がついた。

“お前は一体何者だ?”

何処かから声がする
自分以外は人っ子一人いないのに

『だれ?どこにいるの?』

“話がわかるのか…?”

『わかるわよ。ねぇ、どこなの?』

“ふふ、不思議な子だ。私の声が聞こえるなんて。
お前は今私の上に乗っているではないか。”

『乗っているって、もしかしてこの木の妖精さん?』

“妖精ではない。木、そのものだ。
我は暴れ柳。ここホグワーツの創立記念樹として植えられた。”

『暴れ柳さん…。でも全然暴れていない…』

“普段はいつも怒りの感情ばかりだ。
だが今日はなぜだか穏やかな気分なのだ。”

だから君を乗せている、と
暴れ柳は言った。

『そうなの、ありがとう暴れ柳さん。
でも私にはあなたはとても優しく感じるなぁ。
本当に嫌だったら私を下ろすことも
そこにいる小鳥を追い払うこともできるでしょう?』

だからあなたは優しいよ。
優季はそう暴れ柳に
寄り掛かるようにして言った。

暴れ柳はそれから何も言わなかった。
だが小鳥を追い払うことも
私を下ろすこともせずただ無数にある枝を

柔らかく揺すっていただけだった。


しばらく景色を楽しみうとうとしていた時
隣の小鳥が話かけてきた。


“ねぇねぇ!君はどこからきたの?”

『私は……どこから来たのかな、』

本当にわからないのだ。

“ふぅん、そっか。
でもいずれ思い出すよ!
僕の名前はピース!君の名前は?”

『私の名前は優季。桜葉優季よ。』

自分の名前だけは覚えていた。
他のことは…と考えを巡らせると
頭痛がした。

“どうしたの!?大丈夫?”

『うん、平気。』

“ならいいけど…。
そうだ優季!歌を歌おうよ!”

『歌?素敵!歌いましょうか。』

するとピースは嬉しそうに
色鮮やかな羽をパタパタさせた。




ピースの可愛らしい鳴き声と
優季の澄んだソプラノが
周りの花、木々、生きる全ての物が聞き惚れ
そのものたちをベールをかけるように包み込んだ。


その歌声はまさに聖女の歌声だった。









(歌はすき。気分が晴れ渡るもの)


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bkm
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