夢だと思いたい


朝日が眩しい。
カーテンの隙間から早く早くと
私を起こすようなそんな日差し。
ぐーっと猫のように体をのばす。

嗚呼よく寝た。


「優季〜、起きてるかい?」

下から祖母カトリーヌの元気な声がする。

『はーい、起きてるよー!』

そう答えカーディガンを羽織ってリビングに下りる。

パンと目玉焼きの焼けた匂い
甘いイチゴジャムの香り
そんな匂いが私を迎えた。

『おはよう、おばあちゃん。』

私は手を洗い目玉焼きを焼くのを
手伝いながらおばあちゃんに言った。

「おはよう、優季。今日もいい天気だ。」

『ええ、洗濯物がよく乾きそう』

「ふぁぁあ…、あぁ、優季。おはよう」

『おはよう!』

あくびをしながら新聞を
持ってきたのは祖父の拳太だ。

私には父と母がいない。

代わりに母方の祖父母に育てられている。
いつも寂しい思いをしないようにと
必ず授業参観や運動会にも参加してくれた。

言葉にはなかなか出せないけれど
本当に感謝しているのだ。

「〜!…っ!優季!」

『…えっ?な、なに?』

「何じゃないわ!あなた学校あるのよね?」

『ある…けど、って遅刻!!』

「ハハハ、優季は本当にのんびり屋さんだ」

お馬鹿さんだな、と笑う祖父を
そんな笑わなくたって…とちょっと
ふて腐れながら身支度をした

「あなた、笑いごとじゃないのよ?」

と祖母

『ととと、とにかく行ってきまーす!』

「「いってらっしゃーい!」」


こうしてなんのへんてつもない
せわしない日常が始まった
…と思いたかった。

急げ急げと走る私。
信号は青だ!と横断歩道を走った瞬間
目の前にトラックが見えた。



キキーッ!!!


ふわり、と体が宙を舞う。

意外と痛くはなかった。

ただ死ぬのって思ってたより
こわくないんだ、と
薄れゆく意識の中思った。





(最後にありがとうだけ言いたかったな)


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bkm
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