哀され姫君



あれから毎晩毎晩優季はハリーと
僕の部屋に通って呪文を体得していく

ハリーもすごいが優季はそれを遥かに上回った
私でさえ困難を要したものをやってのけたのだ
やはりこれなら奴が狙う理由がもっともだと思えた

「はい、二人とも。今日はここらへんにしてお茶にしよう」

『はい、』

「僕もう少しだけやりたいです!」

「全くハリーは、そんなとこもジェームズにそっくりだな。
……あと10分だけだからね。
優季、お茶をいれるの手伝ってくれるかい?」

『はい、もちろん!』

二人でキッチンに立つ

「悩みは消えたかい?」
何気なく言ったつもりが彼女に影を落とした

『まだ、なんです。』
はは、と無理やり笑う彼女を抱きしめたい衝動に駆られた
心の奥底で隠してきた感情が疼きだす

「優季……」

『一週間ほど前、喧嘩をしちゃって…
あっ、私がいけないんです!
誰にでも触れられたくない事はあるのに
私はそれに踏み込んでしまって…』

彼女の目が潤み始める
彼女を奪って強く抱きしめたい
そんな感情が溢れて止まらなくなりそうなのは
満月が近いからだろうか

『でも私、彼が本当に好きで。だからっ…不安で、怖くて……
依存してたんですよね…彼に。』

だめですね私なんてまた君が笑えば
つう、と頬に一筋の道ができた
それを見た瞬間私の感情が堪えることを止めた
彼女を抱きしめていた

『…せん、せ…!?』

「今は泣きなさい、私しか見てないから」

『っ…!…ふぇ、…ぅ……』

彼女は私にすがりつくように泣いた
私は彼女を抱きしめながらもう引き返せないことを悟った
それと同時に幸せにしたいとも思った

ハリーを帰し優季を抱きしめ続ける
涙を全部出し切るまで優季の嗚咽が止むことはなかった

彼女の嗚咽が止んだのを確かめると上を向かせる

「あぁ、目が真っ赤だ」

『いっぱい、泣きましたから…』

鼻声の彼女が少しすっきりしたように
ありがとうございましたと言った
けれどその彼女もどこかはかなく壊れてしまいそうだった

頬に手をそえ親指で残りの涙を拭ってやる
その時微かにノックの音
来客が誰かなど姿を見なくともわかっていた

「優季、」

彼女が上を向いたのと同時に
彼女を再び抱きしめ片手で後頭部を支えキスをした

「ルー…、」

唇を重ねながら入ってきた彼を見やる
君がいけないんだよセブルス
そんな顔するくらいならしっかり捕まえておけよ

唇を離せば放心状態の優季

『っ……はぁ、…先生…?』

「っ!ルーピン貴様!!何をしたのかわかっているのか!!!」

杖をこちらに突き付けるセブルス
私も彼の喉を目掛けて杖を向ける


「それはこっちのセリフだよセブルス…
優季のことが好きなんだろう!?
じゃあ何故泣かせたんだ!!
何故本当のことを教えてやらない!!
どうして君はそんなに今も昔も愛した人を振り回せるんだ!!!」

『…本当のこと、って?
教授、教えてください。私には……
私には言えないようなことなんですか…!?』

また涙をこぼす優季を
しっかりと杖を握っていない腕で引き寄せる

「優季、我輩は……!」
そこまで言えば彼は口をつぐんだ

『………しばらく…距離を、置いてください……
…今はまだ教授のこと……っ信じられないです…!!』
私のローブを握りしめて泣く彼女


「……だそうだよ、セブルス」

「………あぁ…わかった。」

彼はまだ何か言いたそうだったが
薬の入ったゴブレッドを置いて出て行った





泣きつかれた優季を自分のベッドに寝かせ
瞼に冷却呪文を唱えた
赤みがすこし引いたようでよかった

隣で静かに眠る彼女の額にキスを送る

「君は、僕が守るさ」

そう呟いたのを聞いたのは半月だけだった






















(君の不安は僕が取り除いてあげる、全て、ね)


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